mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

季節のたより

季節のたより128 ヤブカンゾウ

古名は「忘れ草」 しべ(蕊)を花びらに変えた花 郊外の田んぼ道を歩くと、稲の緑が一面に広がる水田のなかに、赤オレンジ色の花が咲いていました。ヤブカンゾウの花です。 咲いているのは田んぼのあぜ道。草むらからすっと勢いよく立ちあがるようにして咲い…

季節のたより127 タケニグサ

日本で最大級の野草 花びらをおしべに変えた花 野山で、広い葉と白い花穂で目立つようになった大型の野草は、タケニグサです。 タケニグサは7月頃に咲き出し、標高の高いところでは8月頃まで咲き続けています。まわりの野草と比べても群を抜いて大きく、そ…

季節のたより126 ノアザミ

春咲きのアザミ 花粉を押し出すみごとなしくみ 野原で鮮やかな紅紫色のアザミの花を見かけるようになりました。 アザミの花はどれも似ていて、名前をきめるのは難しい花です。唯一特徴があって分かりやすいのが、このノアザミでしょう。 多くのアザミ類は、…

季節のたより125 スイカズラ

甘い匂いと蜜を持つ 日本原産のツル性植物 散歩道を歩くと、フェンスにツルを絡ませたスイカズラの花が、甘い匂いを漂わせていました。この花を見ると、モンゴメリ作の『赤毛のアン』の場面が思い浮かびます。 物語の舞台はカナダ東部のプリンス・エドワード…

季節のたより124 ユリノキ

北米原産の高木 美しい樹形と珍しい葉と花の形 私が初めてユリノキの花に気づいたのは5月、若葉が青空に映えて美しかったので、何気なく街路樹を見上げたときでした。宮城県美術館南側から川内にかけて立ち並ぶ高木の緑の葉の間に、クリームとオレンジ色の…

季節のたより123 カラスノエンドウ

紅色の蝶形花 小さな野花の生存の知恵 歩道の植え込みの上に、カラスノエンドウが花を咲かせていました。スイートピーを小さくしたような蝶形花で、花の色は赤系の2色。上の花びらが薄紅色で、下の花びらが濃紅色です。明るい陽射しの透過光が、花の色をき…

季節のたより122 チゴユリ

晩春の林床に咲く白い花 木漏れ日を利用して生きる 雑木林が春の色に染まり始めると、カタクリやキクザキイチゲなどの早春植物が姿を消していきます。少し寂しくなった林床に姿を見せる代表的な植物がチゴユリです。白い花が小さく稚児のようにかわいらしい…

季節のたより121 シラネアオイ

高山に咲く薄紫色の花 日本だけに自生する固有種 若い頃、何とかこの花を見たいと思っていました。その憧れのシラネアオイと初めて出会ったのは、雪のまだ残る栗駒山の裾野に広がるブナ帯の山道を歩いたときでした。国道398号線の脇道に入り、雪解け水の…

季節のたより120 キクザキイチゲ

早春の野生のアネモネ 花色豊かな日本の自生種 近くの里山の土手にキクザキイチゲが咲き出しました。1週間前に訪れたときは影も形もなかったのに、いつの間にか地上に現れています。毎年決まってこの場所で花を咲かせて楽しませてくれます。 キクザキイチゲ…

季節のたより119 クロモジ

マンサクに続く早春の花 爽やかな木の香り 早春の青葉山の林を歩くと、木々の冬芽が動き出している気配がしました。春を待つ思いは人も草木も同じです。 絹の如く ふくらみ来る 黒文字の 芽の下に丸き 蕾いまだし 土屋文明 歌人の土屋文明は第七歌集「山下水…

季節のたより118 ネコヤナギ

川辺で春を告げるヤナギ 銀白色の花穂 河原のネコヤナギの冬芽が ふくらみはじめました。 まど みちおさんの「ねこやなぎ」は、こどもたちと一緒に声に出して読むと、一度で覚えてしまうようなリズミカルな詩です。 早春、渓流の反射を受けて花穂が輝きます…

季節のたより117 ミミナグサ

ハコベに似た花 枕草子の「若菜摘み」に登場 平安時代には「若菜摘み」という習慣がありました。春の野に出て若菜を摘んで、正月七日に若菜を食べるという行事です。旧暦のお正月ですから、新暦の1月下旬から2月上旬にあたります。萌え出る新しい生命力を…

季節のたより116 イイギリ

ぶどうの房のような赤い実 飯を包んでいた葉 冬晴れのある日、青葉山に隣接する治山の森の山道を歩いていると、房状になった赤い実が、あちらこちらに落ちていました。昨夜の強風で枝が折れて落ちてきたようです。見上げると、すらりと伸びた高木の枝に、ひ…

季節のたより115 キチジョウソウ

花が咲くと「幸せの兆し」 県内が北限自生地とも 降り出した雪が冬枯れの野道を白く覆い始めています。その雪に負けまいと顔をのぞかせている赤い実を見つけました。キチジョウソウの実です。細長い緑の葉が赤い実をひきたてています。 キチジョウソウは、漢…

季節のたより114 サルトリイバラ

赤い実と鋭いトゲを持つ 火山灰地でも育つツル植物 野山は冬の眠りに入りました。木々が木の葉を落として寂しくなった雑木林に足を踏み入れると、すぐ目についたのはサルトリイバラの実でした。 西日を受けて黄色に光る枯れ葉のかげで、成熟した赤い実がその…

季節のたより113 コセンダングサとひっつき虫

動けない植物の移動する知恵 いろいろな技 秋から冬にかけて、野山や川沿いなどを歩いてふと気がつくと、服や靴ひもに草の種子がいっぱいくっついていることがあります。散歩につれていく犬たちの毛にもついています。これらの種子のことを種類を問わずに総…

季節のたより112 ガマズミ

甘酸っぱい赤い実 人の暮らしに密着した木 晩秋から初冬にかけて赤い木の実が目につくようになります。ガマズミの木の実もその一つです。 ガマズミの赤い実は、はじめは酸っぱいだけなのに、晩秋に霜が何度か降りると甘みを増して食べごろになります。こども…

季節のたより111 メグスリノキ

日本のみ自生の民間薬の木 学名にみる日露の交流 「紅葉」と聞くと、真っ先にイメージするのは、モミジやカエデでしょう。そのモミジやカエデの紅葉が終わる晩秋に、紅葉のトリを飾っているのが、メグスリノキです。 メグスリノキの紅葉。サーモンピンク色の…

季節のたより110 トチノキ

「モチモチの木」の実 あく抜きは縄文人の知恵 トチノキというと、すぐ思い浮かぶのは「モチモチの木」のお話です。 モチモチの木ってのはな、豆太がつけた名前だ。小屋のすぐ前に立っているでっかいでっかい木だ。 樹齢300年を超えると推測される巨木。とれ…

季節のたより109 ホトトギス

鳥の名と同じ名 ハチの形に合わせて進化した花 ホトトギスと言えば、初夏を代表する鳥ですが、その鳥の名とまったく同じ名前で呼ばれるのが植物のホトトギスです。ホトトギスの花は、赤紫色の斑紋を持ち、凝ったつくりの独特の形が目をひきます。「どんな草…

季節のたより108 キバナアキギリ

日本の野に咲くサルビア 唇形花が持つ受粉のしかけ うっそうと茂っていた木々の葉が色づき始めました。散歩道を歩くと、夏の間、静かに養分を蓄えていた秋の野花が、待ちかねたように花を咲かせています。 小川近くの、やや半日かげの草むら周辺が、明るく彩…

季節のたより107 アキノノゲシ

ケシの名でもキク科の野花、 食べられるレタスの仲間 郊外の休耕田と思われる草むらに、他より抜きん出て立ち上がり、枝先に淡いクリーム色の花をたくさんつけた野花が咲いていました。アキノノゲシ(秋の野芥子)の花です。 タンポポをひとまわり小さくしたよ…

季節のたより106 センニンソウ

雪を思わせる純白の花と実 クレマチスの原種 詩「東岩手火山」は、宮沢賢治が農学校の生徒を連れて岩手山に登山したときの印象をもとに創作されたものです。その一節にセンニンソウ(仙人草)が登場します。 ・・・・・・・・ 《雪ですか 雪ぢゃないでせう》…

季節のたより105 ヤブガラシ

巻きつく相手を選ぶつる 蜜は昆虫のオアシス 夏本番の暑い日ざしがジリジリと照りつけてきます。 近くの雑木林の周りを囲む藪原で、ヤブガラシが花をつけていました。オレンジ色の小さな花です。花の周りには小さな黄緑色のつぼみがたくさんついていて、咲き…

季節のたより104 ノウゼンカズラ

炎天下に咲く夏の花 寺田寅彦「花物語」に思う 暑い夏に花を咲かせる樹木が少ないなかで、炎天下でも次々と花を咲かせて、夏を強烈に印象づける花がノウゼンカズラです。 晴れた夏の日の午後は空が怪しくなりざあっとひと雨。夕立が去って、爽やかな風が吹き…

季節のたより103 ヒルガオ

万葉人も愛でた花 古代からクローンで同じ「顔」 道端にうす桃色のヒルガオの花が咲き出しました。ホタルブクロ、ウツボグサなどと一緒に雨降花と呼ばれているのは、梅雨の頃に咲き出し濡れて咲いているようすがひときわ美しく見えるからでしょうか。そうか…

季節のたより102 イチヤクソウ

森の林床に咲く花 光合成し菌類からも栄養を得る 梅雨の晴れ間に治山の森を歩いて、林床に咲くイチヤクソウの花を見つけました。 根もとに集まる丸い葉の間から花茎をのばし、その先に小さな笠をかぶったような白い花を咲かせています。 森の林床に咲く早春…

季節のたより101 ヘラオオバコ

土星の環のような花 ヨーロッパの古くからの薬草 道路端や空地で、土星の環のようなちょっと面白い恰好をした花を見かけたことはないでしょうか。風が吹くと、環がゆらゆら回転して愛嬌のある花です。 この草花は、日本の在来種であるオオバコ(季節のたより…

季節のたより100 ホオノキ

空中に咲く蓮の花 太古からいのちをつなぐ 5月も後半、近くの森に入ると、草木や土壌の吐き出す呼気のような匂いのなかに、くっきりとした清清しい香りが漂ってきます。香りの源をたどっていくと、大きな葉、大きな花のホオノキでした。 梨木香歩さんの『西…

季節のたより99 ウワミズザクラ

ブラシの花は異色の桜 親元離れた種子のみ育つ 桜の花の季節が終わり、まわりの緑が急に濃くなる季節に咲き出す異色の桜が、ウワミズザクラです。 ブラシのような白い穂の花がいくつも咲いて、樹木全体を真っ白に包んでいきます。季節になると一斉に咲き出す…