mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

正さんのお遍路紀行(四国・愛媛編)その7

 菩提の道場 ~8日間で愛媛を歩く~

【7日目】 3月21日(木) ~石鎚山系の山懐から歩く~

JR今治(6:50)⇒ JR伊予西条(7:11)バス ⇒ 横峰登山口・上野原乗換所 バス ⇒ 横峰寺バス停(8:50)・60横峰寺 ⇒ 7㎞ 奥の院白滝 ⇒ 3km 61香園寺 ⇒ 1.5km 62法寿寺 ⇒ 1.5km 63吉祥寺 ⇒ 3km 64前神寺 ⇒ 1km JR石鎚山(16:08)⇒ JR伊予西条(16:13)

 天気が悪く今日も楽天ポンチョの出番かと思っていたが、横峰寺のある山に向かうと雨はやんでいた。雨上がりの山間から雲が流れていくのがいい。

   f:id:mkbkc:20190730111116p:plain
     横峰寺下りからの眺望

 《大丈夫かな?Nさん》
横峰寺へのバスにはお遍路さんしか乗っていなかった。小平市から来たというNさんは視野狭窄という障害があり、注意深く辺りを見回してもよく見えないことがあると話してくれた。バスを降りるとき、彼が渡した切符は往復券だったので、運転手さんが「9時30分出発ですからね。」と確認していた。そうしたら彼は「えっ?片道切符じゃないんですか?」と自分の切符を見直していた。切符自体はこのバスが出た上野原乗換所で購入することになっていた。そこには大きな字で片道と往復の料金表があったはずだ。私は、すかさず運転手さんに「片道分返金してください。」と頼んでみた。するとNさんは、「あ、いいんです。これは自分の勉強代なんですから。」と自分の購入ミスをありがたいもののように言った。私はなおさら「間違っただけだから返金してもらえないの?」と尋ねると、さっきの乗換所じゃないと返金できないとのことだった。今にして思うと、あの運転手は変だ。返金するには、今来た15,6kmの車道を歩いて戻れというのと同じだ。Nさんの左胸には、障害を示す赤いマークがあった。

 ここから横峰寺まで10分程度。私はNさんのずっと後ろから歩いて行った。階段の上り方、ぬかるんだ道の歩き方。ん~あれで、これからの山道10km下れるかなあ。でも、お寺での作法は俺とは全く違い、全てに真剣そのものだった。よほど、「一緒に下りますか?」と声をかけたくなったがやめた。彼は失敗も含めて自分だけの力でお遍路がしたいのだ。
「じゃ、ゆっくり下りてくださいね。奥の院で待ってますよ~。」と声をかけて私が先に出た。しばらく歩いてから待つだけの余裕もないのに、何であんなこと言ってしまったんだと反省。

 f:id:mkbkc:20190730112349p:plain
   香園寺奥の院を示す案内標示(これなら迷うことはない)

 香園寺までの下り山道10kmは楽しかった。後は平地にあるお寺を3つ廻れば、今回の愛媛は終了となる。
 62番宝寿寺を出て、信号を渡って次の吉祥寺に向かい始めたとき、向こうから来るNさんとばったり!

《4時間半後に再び》
 「えっ!なんでなんで?どうしたの?」と声を上げる。下りのへんろ道は1本のはず。追い越された訳でもなし、どうして彼が逆方向から来るのか。
 Nさんが言うには、山の中でへんろ道を間違えてしまって、ずっと車道を歩く羽目になり、たどり着いたのが例の乗換所だったとのこと。そこの人から、下り道を教えてもらって63番吉祥寺に着いたとのこと。「とにかく何であれ、無事で下りて来られてよかったなあ。」と二人して喜んだ。彼は私にお札(自分の名前と大まかな住所のはいったおふだ)をくれた。あいにく私は準備していなかったので、「仙台の〇〇です」と名乗っただけだった。

 山歩きど素人の私でさえ、へんろ道を外すことはなかった。それぐらい道標がしっかりしているということだ。にもかかわらず、道を見失ったNさん。改めて、彼の視野狭窄というハンデイーを思った。「これも勉強ですよ。」とうれしそうにNさんは歩いて行った。ほんのちょっと垣間見たNさんだったが、一生懸命生きている姿に励まされたような気がした。「またどこかで会おうぜ!」と声をかけて見送った。

 f:id:mkbkc:20190730112942p:plain f:id:mkbkc:20190730113023p:plain
     前神寺へ:みかんがたわわに                      前神寺入り口