mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

正さんのお遍路紀行(四国・徳島編)その5

 発心の道場 ~お遍路とは何か、徳島を歩いてみる~

【6日目】6月14日(水) ~ 阿波の難所「お鶴」と「太龍」を歩く ~

宿発 8:30 車 ⇒ 20 鶴林寺 9:20 ⇒(2.7km)大井休憩所 10:20 ⇒(4.3km)
21 太龍寺 12:40 ⇒ ロープウェイ ⇒ 和食東バス停 15:40 ⇒ JR桑野駅 16:34 ⇒ JR徳島駅 ⇒ JR板野駅 ⇒ 宿着 18:30

  2つの山越えとなるこのルートは、藤井寺焼山寺間よりもずっと短い山歩きだが、それでも7kmの遍路道である。是非とも歩いてみたいと思っていたので、ここを最後の日に持ってきた。楽しんで歩こう。

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         20番 両側に鶴が守っている鶴林寺

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     鶴林寺からの下り        向こうに見える山が太龍寺かな?

 鶴林寺から下りきったところに大井川が流れている。そこまでずっと急な下りが続いた。写真は初めの所で歩きやすそうに見えるが、後は階段状になっているところを落ちるように下った。
 おかげで膝が痛くなった。逆打ちでここを登ったら、仙人になれると思った。

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           大井川にかかる橋

 ここを渡れば、4.3kmの登りが待っている。“ へんろころがし ” と呼ばれる急坂が最後の方にあるというので、ちょっと楽しみだ。

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     太龍寺へつづく          登り切ったところに道標

 最後の登りにかかっていたとき、上の方に丸まってる物が見えた。黒くはないのでイノシシか!と杖に力が入った。しかし、よく見ると人間だった。あまりの急坂に、一休みしているおじさんだった。歩いていればまだしも、丸まって休んでいたものだから、「いやあ!熊かと思いましたよ」と声をかけた。何となく足が悪そうな感じの方だったので、「杖2本よりも、トレッキング用のストックの方が握りもあっていいと思いますよ」と余計なことを言ってしまった。

 3大へんろ転がしの一つと言われているが、登山道と比べればずっと整備されていた。確かに急登の感じはあったが、転がる人はいないだろう。休み休み登ればちゃんと頂上につける。

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       21番 太龍寺             巨木に圧倒される

《動物と間違えたおじさん》
 はあ~やっと終わったなあと休憩していたら、さっきのおじさんがゆっくりとやって来た。「おっ、つきましたねえ。ごくろうさまでした。」と声をかけたら、自分のことをいろいろ話し出した。キリスト教だという彼は骨を作れない骨髄液のガンを何とか克服し、そのリハビリをかねて歩いているということだった。片方の足がうまく動かないにもかかわらず、歩くのが楽しいという感じで話していた。もう一つ、彼の歩く理由があった。自分がよくなった代わりに、長男が重いがんを患っていると話してくれた。それを聞いたとき、神も仏もあったもんじゃないなあと思った。お遍路でもやらなきゃどうにもやりきれないよなあ。
 それでも彼は、重い話を明るく話している。「こんな重い話は他人としか話せないんだけどね。」と口にしながら、14.5km先のお寺に向かって歩いて行った。

《岡山のおじさん》
 ロープウェイのりばで岡山から来たというおじさんから声をかけられた。仙台から来たことを告げると、東日本大震災の話になり、私の知っている限りの今の状況を話した。その縁で、バス停まで送ってもらうことになった。歩いても大した距離ではなかったが時間的に厳しかったので、ぎりぎり間に合った。桑野駅からの電車にもぴったり間にあった。そうでなければ帰りは確実に7時を過ぎていたことだろうと思う。
 お遍路の面白さは、黙々と歩くことも大事だけど、知らない人たちとの出会いもあるなあと思った。今までは、巡ることだけで精一杯だった自分を振り返ったりした。

《宿とご主人のこと》
 たまたまなのか、お客はおいら一人。洗濯スペースもあるし、お風呂も自分でお湯入れて勝手に入る。「夕食は何食べたいの?」と聞いてくれる。カツオのたたきを頼んだとき、向こうの食べ方なんだと言っていたが、分厚く切ったニンニクがどばっと乗っかっていた。それをしこたま食べたもんで、次の日腹に来た。そんな感じなので、自分の家にいるようなリラックスできる宿だった。問題は一つ。宿を固定すると必ずここに戻ってこなければならないのだ。時間もお金もかかると理解した。
 ご主人は、ほんとに親身になっていろいろアドバイスやら送迎やらをしてくれた。馬油もあったな。でも、“ えっ!そうだったの!” ということが最後にやって来た。精算の段になったら、「何回か送迎もしたので、車代をお願いします。」となった。あれはそういうことだったの?てっきり親切心からだとばかり思っていたのだ。もちろん払いましたが、それならそうと始めから言ってほしかったなあ。そのご主人、今はがんの闘病中らしい。元気になることを願わずにはいられない。
                                                                          (終)

(※)徳島編は、これが最終回となります。四国お遍路、最後に残ったのは高知
   ですが、近いうちに連載が始まる予定です。ご期待ください。