mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

今こそ、『どうぶつ会議』をこどもたちと

 今週の水曜日、センターの2022年度第1回の運営委員会が開催された。今年度の取り組みについての意見交換をする中で、今こそ『戦争と平和』もテーマにして欲しいという意見があった。その意見を聞きながら、30年前のことを考えていた。

 正確には31年前の1991年1月、いわゆる米軍による湾岸戦争当時のことだ。私はその当時、宮教組仙台支部(仙教組)の専従をしていた。そして湾岸戦争をすぐ止めよ、また自衛隊の海外派遣を許すなの行動を呼びかけ、それに呼応して連日のように多くの組合員が、地下鉄駅前や生協店舗前で署名活動を展開した。また仙教組単独で500名を超える参加者の集会も開催できた。

 その年の4月に現場復帰をしたのだが、その時、教室で読み聞かせに選んだのが、ケストナー少年文学全集から『どうぶつ会議』(訳;高橋健二)だった。
 誰もが読んだことがあるとは思うが、簡単に内容を紹介すると、世界中の動物たちが、『国という単位を廃止しよう、すべての軍隊を廃棄しよう』という国際条約を呼びかけ、子どもたちがそれに賛同し、最後はしぶしぶ大人たちの国際会議もそれを承認するという物語だ。

 動物たちは、自分たちの要求を認めさせるために、人間の将軍や政治家たちと戦う。
 ネズミは国際会議の資料を食べ、蛾の大群は会議場の将軍たちの服を食べて裸にする。しかしこの襲撃作戦は人間の知恵が勝って敗北する。そのとき将軍や政治家たちは、「我々には文書と兵器があるが、動物たちには無い」と誇らしげに言う。たしかに、これらは人間の知恵が作り出したものだが、しかし、これが人間を滅ぼすことになるかもしれない。この襲撃に敗れた後、しかし今度は、世界中の子どもたちが動物に味方して家出するので、子どもの姿は消えてしまう。そしてとうとう最後には、動物たち・子どもたちが勝利する、という展開だ。

  その年以来、毎年のように、『どうぶつ会議』は、教室で読むようになった。1999年には池田香代子さんの訳で大型絵本も出版され、もっぱらこの絵本を開いての読み聞かせは退職するまで続いた。それは池田さんが絵本のあとがきで「動物たちは、今日も業を煮やしているでしょう。でも、いやにならずに踏みとどまる心の力が、私たちにはあることを、この絵本に出てくる動物たちといっしょに確かめたいと思います」と書かれていたことに共感し、それが支えとなった。子どもの幸せ・安全を願わぬおとなはいないだろうと強く思うからである。

 そして『どうぶつ会議』と同じくらいに子どもたちに好評だったのはチャップリンだ。『モダンタイムス』や『独裁者』は、5・6年生といっしょに道徳の時間などでビデオ鑑賞をしながら話し合ったのも忘れられない。
 教室で、ご家庭で、ぜひ子どもたちと一緒に読んでみて欲しいと願いペンをとりました。<仁>