mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

ラーゲリ=強制収容所が呼び起こす 3つの思い出

 テレビを見ていたら、映画『ラーゲリより愛を込めて』のCMが流れていた。
 『ラーゲリ』=強制収容所は、この1年、ウクライナとロシアの戦争で、ロシアが捕らえたウクライナ人をシベリアの収容所へ送る報道で何度も耳にしてきた。
 そしてシベリアの強制収容所ラーゲリ』に関しては、3つの思い出?がある。

   一つ目は私の義父が先の大戦で、シベリアの収容所で過ごし、無事釈放され帰国したということ。生前、義父はシベリアでの生活については、一切話すことはなかった。軍人恩給がもらえないことへの不満は言っていた。ただ妻の実家の部屋の壁に、大きな額縁に納まった、日本政府から送られた内閣総理大臣竹下登の名の賞状と銀杯があった。きっと人には語れない辛い思い出なのだろうと、私もあえて聞くことを避けていた。だから詳しいことは義父が他界したあと、義母からの伝聞でしか、わからないことだった。 その義母へもシベリアでの具体的な生活の様子は話さなかったらしい。

 二つ目はすでに故人となられた彫刻家・佐藤忠良さんである。私が宮城民間教育連絡協議会(宮城民教連)の事務局の仕事をしていた頃、東北民教研の夏の集会や宮城民教連の冬の学習会などで記念講演をしていただいたり、現代美術者の美術の教科書づくりの話を聞いたりするなかで、1945年から1948年までの3年間を過ごした強制収容所での生活の話を聞くことができた。詳しいことは忠良さんの著書などでも知ることができる。

 そして三つめは、10年ほど前、このコーナーにも定期的に投稿している春さんから薦められて読んだ、ノンフィクション作家である辺見じゅんの著書『収容所から来た遺書』(文春文庫)という本である。春さんに勧められた本は数多くあるが、私にとっては10本指に入る感動作品の1冊だ。
 多少ネタバレにはなるが、文庫本の裏表紙に、解説を担当した吉岡忍の短文があるので紹介する。以下、引用。

敗戦から12年目に遺族が手にした6通の遺書。ソ連軍に捕らわれ、極寒と飢餓と重労働のシベリア抑留中に死んだ男のその遺書は、彼を欽慕する仲間達の驚くべき方法により、厳しいソ連監視網をかい潜ったものだった。悪名高きラーゲリに屈しなかった男達のしたたかな知性と人間性を発掘した大宅賞受賞の感動の傑作。

 さて、遺書は全部で4通。ノート15頁に渡って綴られていた。これだけの遺書をどのようにして遺族の手元に届けられたか。その方法は空前絶後といっても過言ではない。読んでびっくりだ。さらに「子どもたち」に宛てられた遺書は、私たち日本人に向けられたメッセージのようにさえ思われた『収容所から来た遺書』。これ以上のネタバレは避けよう。ぜひぜひ手にとって読んで欲しい。

 そして何と、この事実が、冒頭で述べた映画『ラーゲリより愛を込めて』となって、今月9日から全国一斉に上映が始まった。さっそく見に行くことにしたのはもちろんのことだ。<仁>