mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

正さん「熊野古道」伊勢路 ひとり旅10(完)

伊勢神宮から那智の滝』 200kmをせっせと歩く



  【10日目】4月25日(火)雨時々くもり16℃
    ~ さあ、帰るぞ! 新宮から仙台へ ~

◆ あれ? どっかで見たお人だなあ・・・
新宮駅の構内で、快速南紀を待っていると、
予想以上に人が集まってきた。
中でも、外国人旅行者の多いのに驚いた。
超特大のキャリーケースと重そうなバックパックを背負っている。
日本の有名所を、長期間かけて巡るのだろうな。
きょろきょろ観察しているうちに、電車がやって来た。
ん? ぞろぞろ動き出す人の中に、見覚えがあるような、ないような・・・
目で追いながら、思い出そうとした。
そうだ、あそこで会ったぞ。

3日目の鮎のお宿だ。
朝の出がけに、少し話をした人だ。
縦走するような大きな荷物には、テントもシュラフも入っていた。
彼の話によると、このような荷物を背負っての山歩きは、初めてとのこと。
ペースも分からず、荷物も重く、足を痛めてしまったらしい。
おまけに、林の中でテントに寝たら、寒くて風邪を引いてしまったと言う。
だから、急遽この民宿に逃げ込んだということだった。
無理せず、どこまで行けるか歩いてみると出発していった。
50代前半と思える、がっしりした男の人だ。
大丈夫かな、とその時思った。
体調のこともあるが、靴が気になった。
どう見ても、山用ではなく、運動靴だったからだ。
この伊勢路ルートは、雨に遭わなければ、運動靴でも歩けるだろう。
だが、あの荷物に対して運動靴ではバランスが取れない。
足への負担が明らかに倍加する。
足を痛めたのは、そのせいと思われる。
でも、それを、今言ったからとてどうにもならない。
そんなことを思いながら、見送った人だった。

その彼が新宮駅にいた。
ということは、おいらと同じように、ここまで歩いてきたのだ。
どんな旅だったのか、話してみたくなった。
でも、彼は指定席の車両に乗り込んでいった。
こっちは当然、自由席。
出かけていくことも考えたが、満席の指定席では迷惑だろう。
それぞれに、自分の旅を沈殿させる時間にしよう。

◆ 気になっていた「足跡」


初めのころ、峠道に、人が歩いたような痕跡があった。
はっきりとした靴跡ではなく、何かの踏み跡。
まだ新しいようだ。
ずいぶん朝早くに出発したのだろう。
ストックを着いた形跡もある。
だが、ストックにしては突き跡が大きい。
ふ~む。

やがて、道の両脇に、見慣れた “ ほっくり返し ” が出てきた。
やっぱりイノシシか。
人の踏み跡は数日前で、その上に真新しいイノシシの足跡。

ということは、時間差で、イノシシとともに歩いていたのだ。
彼らは人間を避けて、夜中や早朝に移動したに違いない。
あまり嬉しくはないが、決して一人ではなかったのだ。
四国遍路なら「同行二人(弘法大師と)」
ここ伊勢路なら「同行二匹(どちらも動物だ)」となるか。

◆ おてては治るのか?

手袋のような腫れは、だいぶ引いてきた。

帰ってきて数日。
腫れた原因が分かった。
両腕の皮が少しずつむけてきた。
そう。日焼けだ。
一日だけ日が差さなかった。
あとはずっと日に当たっていた。
左手の甲は、日焼けを通り越して、魚の生焼け状態まで焼けたのだ。
どんなに日に当たっても、こんなになることは一度もなかったのに。
右手の甲もかなり日に焼けたが、腫れはしなかった。
その理由は、だいたいが南西に向かって歩いたことによる。
いつも左手の甲は太陽と向き合っていた。
おそらく、海沿いを歩き続けた “ 浜街道 ” の一日が、だめ押しとなったのだろう。

虫除けは準備したが、日よけ止めまでは考えもしなかった。
“ 今更、シミなど恐れてられるかい ” てなもんで、浮かびもしなかった。
まさか、シミより怖い日焼けがあるとは。
次回からは、携帯品の必須第1位だ。

手がこんなだから、顔だって当然焼けてるはず。
おそるおそる鏡を見たら、左側のシミがとんでもなく増えていた。
と、一瞬思った。
だがそれは、加齢によるものだ。
今回の日焼けは、じわじわと、皮膚の自然劣化を加速させるに違いない。
紫外線を甘く見てはいけないことを、おれは知った。
時すでに遅しだが。

◆ やっぱりいいな!「歩きたび」 
誰とも会わずに、山の中をひとりで歩く。
「そんなに楽しいか?」
ん~ なんて言うか、静かな楽しさというか・・・
自然の中にいるときの感覚かな。
山登りとも少し違うが、自分の足で感じ取っていくのは悪くない。
楽しいのかどうかは自分でも分からないが、また出かけたくなる。

ところで。
戻ってきて意外だったのは、家の周りの新緑。
東北がこんなにきれいだったとは。
紀伊半島は、どんな山も熊野杉に覆われていた。
だから、こっちの春とはずいぶん違う感じだった。
落葉樹林はついぞ見なかった。
それでも、“ 古道伊勢路よ、ありがとう ” だ。

蛇足。
この時期に出かけるのは、もちろん春の匂いに誘われるからだ。
同時に、蚊や虫がまだ活動しないことも大きい。
蚊に追いかけられたのは一回だけだった。
また、暑くはあったが、夏のような高温でもない。
ベストなのは、3月下旬から4月上旬ぐらいがいいのかもしれない。
桜の開花とともに歩くのもいいな。
次回はどこにしようか。

歩いたことのない昔の道への興味。
行ったことのない街、国への興味とさほども変わらないかもしれない。