mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

正さん「熊野古道」伊勢路 ひとり旅1

伊勢神宮から那智の滝』 200kmをせっせと歩く

◆ よし!行くぞ!
 今年もまた春がやって来た。風のにおいと共に放浪の虫がむずむずし出したな。行けるかな? それは体力の問題と、仕事の兼ね合いだ。少し悩む。

 実は、どこを歩こうかと冬の間から調べてきた。まだ歩いたことのない九州はな。九州全県を網羅するロングトレイルのコースがあるようだ。実際に歩いた人のブログを読んでみたが、場所によってはかなり不明瞭なルートもある。地図を正確に読める能力と重いザックを背負った山歩きの豊富な経験・体力が求められると感じた。こりゃだめだ。年取りすぎてるは。次に山陰地方を探ってみた。でも、うまく探せなかった。出雲大社があるのだから、そこに向かう昔の道が必ずあるのだろうが・・・。

 んん~。ある程度、道が明瞭で、道標も置かれているところじゃないと俺には無理だろうなあ・・・。となると、あまり気が進まないが、昨年心残りにして帰ってきた「那智の滝」を間近で見たいなあ。そこに至るルートは2つあるが、今回は海沿いを歩いてみたいな。伊勢神宮から続く「伊勢路ルート」はどうだろうか。ただ、こんなに長い歩きはしたことがない。昨年の小辺路ほどきつくはないだろうが、足大丈夫かな。あんまり自信もないが、無理せず歩けば何とかなるかな。
 ん?何を迷うことがある。行って駄目なら戻ってくればいいだけの話じゃないか。
 そうだそうだ!まずは脱出だ!

◆ 今回のルート

 小さくてよく分からないかもしれないが、伊勢神宮からスタートして⑱、㉓、㉔ (地図の四角番号)と海沿いを歩き、新宮にある熊野速玉大社を目指すことにした。この地図には載っていないが新宮からさらに南下し、那智駅を経由して熊野那智大社那智の滝を最終ゴールと考えた。

【1日目】4月16日(日)曇りのち晴れ21℃
 ~ 伊勢神宮から田丸へ 14km ~ 

◆へえ~ここだったのかあ
家を出てから約7時間。ずっと電車から見える景色を眺めてきた。特に名古屋からの街並みは初めてだった。
鈴鹿って、あのサーキットで有名な鈴鹿?ほうほうほう。” あの重厚な山容が鈴鹿山脈だな。険しそうだ。
“ えっ!あの牛肉の町、松坂ってこんな端っこだったんだ。” さすがに牛は見えない。
四日市の工業地帯は電車が何分走っても工場が途切れない。見ると聞くとでは大違いだな。
一番驚いたのは、すでに田んぼにイネが植えられていたこと。まだ4月半ば。東北では考えられない。
座りっぱなしで腰が痛くなったが、飽きはしなかった。

伊勢神宮(内宮)

 
                            宇治橋前の大鳥居

 
       人だらけのおはらい町(いわゆる仲店)

宇治橋から本殿まで、ゆっくり歩いていくと森の深さが増してゆき、俗世のにおいがだんだん消えていくようだ。20分ほどもかかっただろうか。熊野本宮に劣ることのない風格のある正殿と見た(何を偉そうに)。とにかくお参りだけはしなければ。写真厳禁だった。

さあ、ここからが俺の旅の始まりだ。今日はどこまで歩けるか分からないが、とにかく先を急ごう。と思ったら、おはらい町が人ぎゅうぎゅうで歩けない。
伊勢神宮ってすごい人気なんだと思った。
しかたがないので、流れに乗りながらきょろきょろ。
“あっ、昔事件になった赤福みっけ。”
いろんな店がびっしりあって、ここだけで2、3時間は過ごせそう。

くそう、前に進まない。
そうか、今日は日曜日だったか。

伊勢神宮(外宮)に変なじいちゃんがいた


           外宮の本殿一部


       杉の大きさが際立つ

内宮から昔の雰囲気の残る町中を80分ほどかけて外宮に来た。
もちろんここでも拝んだ。式年遷宮という行事を知っていたので、正殿脇のこの空き地はきっと次の立て替えのための場所なのだと感じた。
そう思って眺めていたら、老夫婦に写真をたのまれた。
お返しに自分も頼んだ。

さて行くかと動き出そうとしたら、じいちゃんが「ちょっと待って、面白いもの見せるから。」とスマホをいじって近づいてきた。
てっきり、伊勢神宮に関わる何かだろうとのぞき込むと、猫の動画だった。
かわいい飼い猫を見せたかったのかと見ていたら、猫とは思えない超下品な声で「ゲー!」といった。何だこれ?
「わははははは」、じいちゃんは一人で受けている。
「面白いだろう、もう一つあるから見て見て!」
何なんだよ、全然面白くない。でも、じいちゃんの頼みならしょうがないな。
もう一つも同じようなもんだった。
「わははははは」、また一人で大笑いしている。
猫は飼ってるわけではなく、単にネットから見つけた面白動画だった。

じいちゃん!ここは、伊勢神宮の正殿のすぐ傍だよ。何しに来たの?
見切りをつけてさっさと歩き出した。
中越しに、じいちゃんが子どもをつかまえて「面白いの見せるから」と言ってるのが聞こえた。
駄目だこりゃ!(いかりや長さん風)
神様の罰が当たるな。

◆ 本日の田丸のお宿
あのじいちゃんのせいではないが、伊勢市駅に戻ったのは16時だった。
宿のある田丸まで歩くとすると2時間はかかる。
初日でもあるので無理せず電車を使うことにした。

「あらあ、仙台からですかあ。わたし来週一泊で青森に行くんです。」
「青森いいですよ。温泉もいっぱいありますよ。青森のどこに泊まるの?」
そんなに真剣に聞いたわけではないが、
「あれ、どこだったかしら。ちょっと待ってください。」
「いやいや、いいですよ。」
居間の方から旅程表を持ち出してきてわたしに見せるんです。
「ああ、黒石だ。ここならいいと思いますよ。弘前の町中よりずっといいですよ。」
「そうですか、友だちが取ってくれたんです。」
満足そうだった。

どうもお客のことより、自分の旅のことで頭がいっぱいの感じ。
あるいは誰かに話したくてうずうずしてたのかもしれない。
気持ちはよく分かるよ、おかみさん。

品数多い夕食の中に、うなぎの蒲焼きも出てきた。
ええっ?ここは民宿だよな。
まさか、黒石をうんと褒めたからかな。