mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

正さん、熊野古道「伊勢路」だけじゃなかった

 正さん、教科書展示会に行く!の巻

 熊野古道伊勢路」ひとり旅を終えて、気分も新たに仕事に邁進していた正さんが、6月末に、この夏採択される小学校の新しい教科書を見に展示会に足を運んだ。国語教育に力を入れていた正さんが、小学校国語教科書を中心にそこで見たこと、感じたことをまとめてくれたので、以下に紹介します。

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《6年生「ヒロシマのうた」が巻末に! しかも2ページのみ!》
 東京書籍に「なぜ『ヒロシマのうた』が巻末付録になってしまったのか」を問い合わせたところ、以下の回答が届きました。

(東京書籍からの回答)
  平素よりお世話になっております。
 この度は「新編 新しい国語」についてお問い合わせいただきまして、ありがとうございます。

 6年「ヒロシマのうた」は長年教科書の本教材として掲載をしておりましたが、令和6年度版では付録とし、本教材には書き下ろしの新教材「模型のまち」を掲載することといたしました。
 「ヒロシマのうた」は、情景描写や心情描写から深い読解ができる教材であり、被爆地の状況や戦争の悲惨さを伝える物語としてもご評価をいただいておりましたが、一方で、一読するのに長い時間を要する、現在では日常的に使われない言葉が多く実感が持ちにくいなどの理由から、授業で扱いにくさを感じるという声が寄せられておりました。
 教材を取り巻く状況や、子どもたちの身近に戦争経験者が少なくなっている状況などをふまえて、現代の子どもたちにとって「他人ごと」ではない物語にする必要があると考え、戦時中に生きた人の視点で語る以外の物語の在り方を模索いたしました。
 新しく掲載しました「模型のまち」は、現代の小学6年生の主人公が、広島に引っ越したことをきっかけに、被爆地の発掘調査や被爆する前の町の模型作りなどを通じて少しずつ戦争や原爆を「自分ごと」として捉えるようになっていく物語です。この作品を読む子どもたちが、主人公の戦争や原爆に対する率直な言葉や成長する姿を、自分と重ねながら読み、平和について考えてもらえたらと願っております。


《QRコードの中味はなにか》
全て開いてみたわけではないので、正確さに欠けるが、以下のようなもの。
〇漢字の読み方、書き方、使い方
〇ひらがなの書き方、ことばあつめ
〇その教材に関する写真、動画など
〇その教材の音声(音読の手本)
〇ワークシート(タブレットにどうやって書くのか不明)
〇作者紹介
〇教科書の続きの文(ヒロシマのうた、宮沢賢治、モモなど)

《考えたいこと》
 確かに東書は驚くほどQRコードが多いと感じた。でも、数の大小が問題なのではない。学ぶ中で疑問が生まれたり、図鑑を見たくなったり、他の作品を読んでみたくなったりという興味を持つことが大事なのだ。子どもの「なぜ?」が生まれると、自分で図書室に行く。友だちに聞く。それでも納得できなければ先生に質問する。そういう「なぜ?」がないまま、作家のことやビーバーの動画を見せても何の喜びも得られないだろうに。そういう情報がいとも簡単に手に入ることは、子どもを駄目にするばかりである。教科書会社は文科省の意図を最大限に盛り込んだのだろう。やがて来るデジタル教科書は、今回よりもっと子どもの感性や本当の興味を奪うに違いない。それは国語に限らず、すべての教科に言える。
 タブレットですべて完結させようとする文科省に対して、教員は、子どもが本来持っている好奇心や五感を見失うことなく、「使う」「使わない」の判断をますます求められる。人間らしく育つために大事なことは何かを常に考え続けたい。

3.学び方の指示がこれまで以上に強化された

《東京書籍の場合》
3年生「サーカスのライオン」を例に取る。
本文の前のページ
現在の教科書は、ざっくり言うと「中心人物に気を付けて読もう」という目標を示してある。

新しい教科書には、以下のように、もう少し細かく示してある。

 物語教材だけでなく、説明文、作文教材、その他の教材にも、「見とおす」「とりくむ」「ふりかえる」の項目で手順がしつこく示されている。
 これはあくまでも、教材文の前に置かれたページである。終わりのいわゆる「手引き」には、もっと多くの指示が出されている。

《光村の場合》
 見た限りでは、本文の前のページはなく、作品題名の右上に「○○に気を付けて読んでみよう」とあるだけだった。でも、教材文の終わりにある手引きは、他社同様指示が多くある。

《教育出版の場合》
 東書同様、学習の進め方が教材の最初のページに用意されている。
 
 物語教材には全て、上のテーマを中心にして、あれやこれや書かれている。
 後ろにある手引きが前に来たような内容である。では、後ろの手引きがないのかというと、そんなことはなく、他社同様である。

3年生の説明文「うめぼしのはたらき」の前段には、
・どんな疑問が書かれていますか?疑問の答えをさがしましょう。
・よいはたらきが三つ書いてあります。さがしてみましょう。
 これだけではない。まるで教師用赤刷りでもあるかのように、次々と指示が書かれています。

《考えたいこと》
 まず感じるのは、教材となる物語文や説明文が大事にされていないということ。子どもがその作品と出会って、心が動かされたり、不思議がったりするためには、まっすぐ作品に向き合わせたい。何のために学ぶのか、どういう勉強をするのか、という前書が多すぎて、作品はその手段という位置づけになってしまっている。ということは、作品は何でもよいということになる。
 新教科書は、○○の勉強のために読みなさい、その勉強の手順はこうですよ、課題はこうですよ、と答え探しをさせるような傾向がますます強くなっている。それで、子どもは、本当に楽しいのだろうか。

 もう一つは、教科書に指示や手引きが細かにあることで、それをやることが授業だと、教員も子どもも思ってしまわないだろうか。作品の断片を取り出しても、その面白さを十分に感じることはできない。

 手引きの内容がすべて駄目とは思わないが、授業の構成は、目の前の子どもたちに合わせて作りたい。
 今後も変遷するだろう教科書に寄りかからないためにも、実践しながらどう使うかをみんなで検討していく必要がある。

4.仙台市の小学校教科書採択(令和6年度使用)の日程

 いずれも14:00~ 上杉分庁舎12階 局1会議室 *傍聴可能
  ①7月11日(火) 音楽、生活、保健   (傍聴済み)
  ②7月14日(金) 国語、書写、算数   (傍聴予定)
  ③7月19日(水) 理科、図画工作、英語 (傍聴予定)
  ④7月21日(金) 社会、地図、道徳   (未定)