mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

電通の罠にはまらない『新しい生活様式』を

 コロナ騒動の中で理解困難なことがあまりにも多く、嫌気がさしているこの頃。とりわけこの国が推進している政策のあまりにものお粗末さには、怒りを越え、開いた口がふさがらない日々が続いている。

 いつ届くのか、やっと届いたと思ったら異物が混入していたと話題になったアベノマスクからはじまり、国民1人に10万円の「特別定額給付金」、つぎにいわゆる「持続化給付金」問題がある。個人に100万・法人に200万を給付するとした経済産業省の政策である。さらに最近は「GoTo トラベル」そして「GoToイート」だという。前者は観光庁が、そして後者は農林水産省が予算化したものだ。まさにコロナ対策予算を各省庁がぶんどり合戦を行った結果の政策である。
 その中から、今日書きたいのは「持続化給付金」と、その業務受付先をめぐる『電通』の存在である。

 新型コロナウイルスの問題で収入が減った中小企業などに最大200万円を払う持続化給付金。対象の事業者は約200万、予算総額は1次補正予算で2兆円超の巨大事業だ。経済産業省は事業の手続き業務を民間に丸ごと委託することにした。これは仕方のないことだろう。厚労省の役人ができる作業量ではないのだから。問題なのは、事業者の公募を前に、経産省の担当者が複数回接触していたのがサービスデザイン推進協議会や電通の関係者だったこと。そしてこの協議会は電通が中心となり立ち上げ、設立から経産省の事業を10件以上受注していたというのである。

 さらに電通は749億円で協議会から再委託された業務を、別の子会社5社へ645億円で外注していた。電通本体の主な利益になるのが「一般管理費」。経産省の規定で、外注費645億円の10%、約64億円が計上できる。そこに電通本体が担う広報費や人件費計36億円の10%も加算できる。合わせると約68億円に上る。ここから家賃や光熱費などの支出、消費税分などを引いて余ったお金が電通本体のもうけになる。こんな仕掛けがあったというのだ。いわゆる「中抜け」の仕組みだ。

 さて、その『電通』とは、最近では海外の広告会社を積極的に傘下に加えることにより規模を拡大し、広告代理店グループとして世界で5本の指に入る規模となっている。
 政府・自民党の広告やキャッチコピーをはじめ、様々な大規模のイベントの企画・宣伝の総本山といえる企業である。総理夫人の元勤務先でもあった。数年前には東大卒の新人社員が過労自死したことからブラック企業といわれたことも記憶に新しい。
 この『電通』に「戦略十訓」というものがある。

  ①もっと使わせろ
  ②捨てさせろ
  ③無駄使いさせろ
  ④季節を忘れさせろ
  ⑤贈り物をさせろ
  ⑥組み合わせで買わせろ
  ⑦きっかけを投じろ
  ⑧流行遅れにさせろ
  ⑨気安く買わせろ
  ⑩混乱をつくり出せ

 残念なことだが、胸に手をあてて考えると、この戦略十訓を知る10年ほど前まで、私自身、この戦略にどっぷりと飲み込まれてきたことに気づかされたのである。そしてその後も、少なからずこの戦略にまんまと乗せられ消費してきたものもある。

 ついでながら、『電通』には「鬼十則」という社員の行動規範があった。前述した新人女性社員の過労自殺を受け、2017年度よりようやく社員手帳から記述を削除すると発表されたものだ。 そこには次のように記されていたのである。

・仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
・仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
・大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
・難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
・取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
・周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の
 ひらきができる。
・計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力
 と希望が生まれる。
・自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すら
 がない
・頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービス
 とはそのようなものだ。
・摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練に
 なる。

 話を「戦略十訓」に戻そう。厚生労働省は、このコロナ対応のため『新しい生活様式』なるものを打ち出している。お節介も甚だしいのであるが、せめて『戦略十訓』に引きずり込まれないような『新しい生活』に踏み出すことからはじめたらいかがだろうか。

 この原稿をダイアリーにアップしようとしてたところに、7月22日、ニュースが飛び込んできた。『電通』は当面、通産省の新規事業を受託しないことにするという。前述のような癒着への批判に判断したようだ。世論の力はまだ健在ということか。
 そうであっても「戦略十訓」の罠には、これからも引っかからないようにすることは、いうまでもない。<仁>