mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

正さんのお遍路紀行(四国・香川編)その3

涅槃の道場 ~6日間で香川を歩き、結願をめざす~

【3日目】3月17日(火) ~瀬戸内沿いの街道を歩く~ (あたたかい)

宿発 8:00 ⇒(4km)⇒ 77道隆寺 9:00 ⇒(8km)⇒ 78郷照寺 11:30 ⇒(6km)⇒ 79高照院 13:20 ⇒(7km)⇒ 80国分寺 15:50 ⇒(1km)⇒ 宿着 16:30

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                                小麦畑が広がる

  今日で3日目。体も慣れるはずなのだがその気配なし。とにかく足の裏が痛い。でもようやく春らしい気温になり、周りをきょろきょろしながら歩くことができた。香川はさすが “ うどん県 ” だけあって小麦畑が多い。緑の草原がきれいだ。この後小学校の脇を通ったら卒業式をやっていた。覗いたわけではないが保護者も出席しているようだった。校庭に車がたくさん止まっていた。仙台では保護者は昇降口までしか来られないと聞いたので、何ということだろうかと思う。

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       初お接待

 道隆寺近くの住宅地を歩いていたら、急におじさんが出てきて「これぼくが作ったお地蔵さん、お接待です」と差し出された。眺めると何とも可愛らしいので「ありがたく頂戴します」と手のひらにのせてもらった。すると今度はおじいさんが出てきて「息子の手作りなんで、もらってやってください」と声をかけられた。「こんなに小さなものを作れるなんてすごいですよ」とお礼を言った。察するに、障害のある息子さんはこのようなお地蔵さんだけでなく焼き物を中心として人と関わっているのだと思った。家の前を通るお遍路さんに、こうして声をかけているのだろうな。なぜ、わたしが来たことを知ったのか。おそらく鈴の音を聞きつけたのだろうと思う。持っている金剛杖には鈴がついていて、“しゃらんしゃらん”と鳴るのです。ありがたやありがたやです、お接待は。

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   78番郷照寺       坂出のアーケード? 遍路道はこんな街の
               ど真ん中も通る。目指すは79番高照院

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  国分寺に向けて綾川の土手を進む      異常に詳しい道標

 普通は矢印でその方向を示してくれるのだが、ここは妙に親切というか念入りというか、おそらく間違いやすいところなのだろう。そう思って歩いてみると、さほどのこともなかった。でも、旧遍路道を分断するように立派な国道が走っていた。その国道脇をしばらく歩くとまた遍路道に合流した。時代の経過と共に、旧遍路道は現代の生活道路に変わってきたのだろうと思う、しかたのないことだが。こういうところを歩いていてもちっとも楽しくはない。

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    国分寺近くの遍路宿に到着

《徳島の青年と出会う》
 例年に比べると遍路客がとても少ないようで、この宿には3人しかいなかった。その中に若者がいたので、次の朝少し話してみた。彼は徳島の大学生で、遍路41日目だという。大きなザックを背負って一番札所からずうっと歩いてきたのだ。なぜお遍路?という問いに、コロナの感染拡大で大学のいろんなイベントが無くなってしまい、時間だけが残ったので歩いてみようと思ったとのこと。「そういう事情はあるにせよ、長丁場のお遍路を選ぶなんてすごいよ君は!」と思わず褒めてしまった。「しかもここまでで41日とは、やっぱり若者は違うな」と言うと、「途中で足を痛めてかなりペースダウンしたところもあったんですよ。出会ったお遍路さんに、ちょっと遅いんじゃないのなんて言われたこともあったんです」と教えてくれた。
 わたしも高知を回っているとき、歩き遍路の達人のような人に会うと必ず聞かれたのが「通しですか(1番から88番までの一筆書きの意味)?」「今日で何日目ですか?」だった。そして必ず「わたしは30日ちょっとで回ってます」と付け加えるのだ。あほか!と思ったことが何度かあった。君は日数を自慢するために歩いてるのか!と怒鳴りたくなったものだ。だから、青年には「そういう人は相手にしないほうがいいよ。あくまでも自分のペースでしっかり歩くのが大事だよな。体全体で自然を感じながら歩こうぜ」と話した。そうだそうだと意気投合しつつも、出発は別々。見送りながら、コロナ感染による自粛をこんな苦行に置き換えてしまう青年がいることに嬉しくなった。

《宿泊先の選び方》
 行程表を作ったら、その日の最後のお寺近辺に宿泊施設があるかまず調べておいた。もちろんお寺併設の宿坊があるかどうかもだ。香川県は宿坊が極端に少ないので、今回は使えなかった。いつ予約を入れるかというと、早くて前日。遅いときには、当日の昼頃。なぜなら、自分の作った予定通りに歩けるのかどうか、歩いてみないことには分からないからだ。特に距離の問題よりも高低差によって、かかる時間がずいぶんと変わってくる。また一つのお寺で最低30分は取っておかないとお参りの儀式(手を清める、ろうそく、線香、納札、賽銭、読経、納経など)ができない。平地でも6つのお寺があれば、お寺だけで3時間を見ておかなければならない。自分のペースや体力が判然としない中で早めに予約をすると、何かあっても、そこまで行かなければならいと無理をすることに繋がる。それを避けたいと思った。
 この日の宿も、前日予約だったと思う。基本は素泊まりOKのところ。経費を抑えることと出発時間を自由にできるから。普通の旅行とは違い、部屋がどうの食事はどうのという視点は全くない。あくまでも,遍路道に近い所であれば最高なのだ。食べ物はコンビニがあれば、予備も含めて仕入れておく。