mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

正さんのお遍路紀行(四国・徳島編)その1

 発心の道場 ~お遍路とは何か、徳島を歩いてみる~    

 縁あって、「愛媛」「香川」のお遍路紀行をブログに載せてもらったが、実際は「徳島」からスタートしていた。その当時は,まさか自分の個人的な旅を世間に公表するなど考えてもいなかったのでパソコンに眠らせておいたのだった。今更という気持ちもないではないが、結願までの道のりを語るには愛媛と香川だけでは中途半端な気がして、3年前に歩いていた「徳島」「高知」も報告することにした。 

◆2017年6月8日(木) 仙台出発
 東京から寝台特急サンライズ瀬戸(22:00発ー高松7:27着)

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       初めての寝台特急にわくわく

【1日目】6月9日(金)~初めてのお遍路・山間の古刹を歩く~

JR高松 8:23 ⇒ JR板野・駅前「ばんどう旅館」 9:17 ⇒ 10 切幡寺 10:30 ⇒(4.0km)9 法輪寺 12:00 ⇒ (2.3km)8 熊谷寺 13:00 ⇒(4.1km)7 十楽寺 15:00 ⇒(1.1km)6 安楽寺 16:00 ⇒ 宿着 16:40

《お宿はどこに?》
 JTBの本を頼りに、とにかく1番霊山寺から始めようと思っていた。お遍路に必要な服装や持ち物は、1番札所の前に何軒か店があるのでそこで仕入れるとして、最初の日は早めに宿に入ろうと考えた。何たって、徳島を全部回ろうとは思っていなかったし、どんな感じなのかを偵察するつもりだったから。3,4日で帰る予定だった。3番札所の近くに宿はないかと思い、板野町役場に電話してみた。すると「お遍路さんが泊まれる宿 がありますよ」ということだったので、仙台を出る前日に、泊まれるかどうか電話してみた。

 すると、意外な展開になった。旅館の主人は「朝着いたら,こっちにまっすぐ来い。うまい方法教えるから,まず宿に来い。」と、積極的に誘われてしまった。夕方ではなく朝に来いとは何だろうと思ったりしたが、おいらとしては、偵察がてらなので、その提案に乗ることにして、初日をばんどう旅館に決めた。

《お遍路宿 到着》
 ここの主人はお遍路宿だけあって、何でも知っていた。身支度に必要な物は、10番札所の入り口にある知り合いの店を親切に教えてくれた。1番札所近くは、黙っていても人が来るから高いこと、お遍路が初めてなら一つの宿を起点にして回ると、宿確保の心配もないし,必要ない荷物を持ち歩かなくてもいいなどの提案をしてくれた。ふむふむ、そういう回り方ならおいらにもできるかもしれないと思った。

《さっそく身支度品の購入》
 旅館でいろいろ御指南を受けてから,車で10番札所入り口に向かい、白衣、菅笠、金剛杖、輪袈裟、さんや袋(お線香やらを入れる白いずた袋)、納経帳(お参りした後、お寺の名前などを書いてもらう)、納札(何者がお参りに来たのかが分かるように自分の住所・名前・願いごとを記入したお札)、経本、ろうそく、線香を購入。これでも必要最小限。けっこうな金額になるなあと思っていたら、さすがご主人の力。9000円弱だった。ありがたや、ありがたや。

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  10番 切幡寺仁王門                切幡寺本堂

 本当は1番から順番に回りたかったのだが、“ あまりこだわる必要はない ” ということだったので、何も分からずここからスタート。お参りの手順は、本を読んでだいたいは頭に入れていたが、他の参拝者を見ながらまねてみた。あれれ? 違うなと思ったのは、手水場で手を洗い、口をすすぐところ。はじめはひしゃくに口を付けてすすいでいたが、他の参拝者は手に水を受けてそこから口をすすいでいた。つまり、ひしゃくには口を付けないのだ。ふむふむなるほどと思った。しかし、今思うに、そんなことは特別なことでも何でもなく、どんな神社仏閣でも行う基本的なマナーなのだ。それほどにお参りということに縁遠かったという証なのだ。我ながらちと恥ずかしい。

 お経を唱えるなども初めてといえば初めてなので、読むのにだいぶ時間がかかった。同じ儀式を大師堂でもお勤めするので、汗が出た。正直楽しくはなかったが、この作法だけは守らねばならないと思った。それがお遍路をする上での最低の行いと感じてのこと。

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 9番 法輪寺はどこだ~い?                                 8番 熊谷寺

 何しろ初めてなので、地図の使い方やお遍路道の案内表示をうまく使えずに、汗だくで探し回った。地元の人に何度も聞くことになったが、みんなあたたかく教えてくれた。

《いてて、豆ができた》
 けっこうハイペースで歩いたので豆ができてしんどかった。こんなこともあろうかと、事前に豆用のカットバンを仕入れていたので、お寺で休憩がてら足のお手入れ。それにしてもこの程度で豆ができるとは、情けない。歩き遍路など口だけで終わりそう。

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     7番 十楽寺             6番 安楽寺
 
《はじめてのお接待》
 農家が何件か連なっていた間の路を歩いていたら、向かい側から軽トラがおいらを目がけてまっすぐに向かってきた。あいや、ひかれると立ち止まったら、スーッとおいらの脇で止まり、「ごくろうさんです。これどうぞ!」と運転席からペットボトル飲料2本を差し出された。その運転といい仕草といい、なめらかなもんだった。たぶん、いつでもお接待できるようにと、準備してあることが窺い知れた。6月の徳島は、すでに夏なので、ほんとにありがたいお接待だった。お返しに自分のお札をあげるのが慣わしだということを、その時はまだ知らなかったので、何べんも頭を下げてお礼を言った。

 歩いているときにはあまり会うことのないお遍路さんも、お寺に入ると、なぜかたくさんの方がお参りしていた。

《豆には「馬油」効きました!》
 初日なのでけっこう疲れた。とにかく帰ったら豆の手入れをしないと明日からしんどいことになる。そのことを主人に話すと、「馬油」という優れものがあると紹介され、500円で購入した。寝る前に豆のところに馬油をたっぷり塗って、その上からカットバンをしておくと良くなると教えられた。一晩ではどうなるもんでもないだろうと思っていたが、次の朝になると、あら不思議、何でもなく歩けるではないの。小さい入れ物なのに500円かあ? と思った自分を恥じた。この時の「馬油」は、88番までの道のりを大いに助けてくれることになった。