mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

震災の教訓を どう継承するか(震災のつどい報告)

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 「震災の教訓をどう継承するか」とのテーマで、【大震災から10年~第7回いのち・子どもと教育を考えるつどい】が、2月27日(土)開催されました。
 参加者のなかには《ぜひ、直接話を聞きたい》とはるばる関西からの参加者もあり、全体としては会場・オンライン参加をあわせると約170名ほどの参加となりました。

 第1部では、語り部として震災の伝承活動に取り組んでいる高校生と大学生からそれぞれの活動の経過や思いについて報告してもらい交流しました。
 七ヶ浜町の高校生たちでつくる「きずなFプロジェクト」は、幼稚園や小中学校での取り組みなど、この間の活動経過を報告しました。メンバーの一人は、語り部活動を通じて、震災を自分事として考えられるようになったと語ります。またメンバーの被災体験をもとにつくった紙芝居を会場で上演してくれました。
 大川伝承の会や「記憶の街」模型復元プロジェクト、3.11メモリアルネットワーク若者プロジェクトなど、さまざまな場を通じて震災と向き合ってきている大学生の永沼悠斗さんは、活動への原動力は《地震がきたらどうするかを事前に家族で話し合っていれればという後悔、悔い》だと言います。また《震災のことを考えたいと思っても、学校教育の中ではなかなか向き合う機会がなかった》と振り返り、震災の事実と教訓を伝える取り組みを、もっと同世代のつながりもつくりながら広げていきたいと今後の抱負を語りました。

 第2部「学校防災の未来」では、震災直後から被災校の聞き取り調査を行い、その事実にもとづきながら、今後の教育や学校のあり方について精力的に発言してきている研究センター代表の数見が、改めて今後の学校防災を考える視点や課題を提起しました。また若者が語り部活動に参加する意義についても「自己肯定感や自己有用感を醸成したりすることを通じての成長につながる」と述べ、若者たちの取り組みへの期待も語りました。

【参加者の感想から】
●自分と同じ、もしくは若い世代が活躍しているという現状を知ると、自分にもできることがあるのではないかと勇気づけられました。10年という時間が経ってなお記憶は残さなければいけないものだと改めて考えることができました。

●きずなFプロジェクトのみなさん、永沼さんのお話から、子どもたちのいのちを守るということは、地域を守り、生活(日常)を守ることでもあることを教えてもらいました。きずなFプロジェクトのメッセージ、永沼さんの活動の基盤にある「地域は自分の一部」ということからも、子どものいのちを守るためには、マニュアルの整備はもちろん、地域と共にある学校として、どのような学校づくりをしていくかが大切だと感じました。

●被災者です。忘れたいという思いが正直強かったのですが、近年ようやく伝えなければならない、むしろ伝えたいという思いが強くなってきました。自分の体験を伝えることから、今まで学んできたことを授業として実践していきたいと思います。若いみなさんの話を聞いて、ますますそういう気持ちを強くしました。

●10代、20代の子ども・若者の自主的・主体的な動きとともに、私たちが行動していくことが必要だと思います。センターの方々とは学会と共同して震災調査に協力して頂きましたが、聞きとりをした高校生どうしであっても被災の度合いの「差」がありました。いまや小学4年生以下は体験もなく、小5・6であっても記憶の濃さが異なるはずです。経験の濃淡は避けられませんが、それでも体験を綴りあうこと、語り合うことは欠かせないはずです。今回のテーマである「継承」のためにも、教育現場の実践にも目を向けていければと思いました。

●Fプロの皆さんの活躍はマスコミ報道などでよく見ていましたが、実際に紙しばいを見たのは初めてでした。実話をもとにした話からは、被災した方の思い(心の傷)がよく伝わってきました。皆さんの学びは、防災の意義を伝えることを通して大きな社会参加につながっています。学びが持つ力の大きさを改めて感じさせられました。

●数見先生が震災直後から被災地をめぐり、検証していたことを知っていたので、今回聞くことができて勉強になった。現場の教員として、ゆるんだネジをしめていただいた思いだった。明日にでも起こるかもしれない自然の脅威に常に謙虚に向き合っていきたいと思う。

●永沼さんの実践の中で印象に残ったのは、大川地区の模型復元プロジェクトです。「記憶がモノやヒトに宿る」と言われるように、その地区を「復元」することは過去を取り戻すことにつながり、地区の皆さんを精神的に力強く支えることになったことと思いました。

●紙しばいに心が動かされました。プロではないのに、その声を発している背景や体験がにじみ出ていたからです。伝承の本質がそこにあり、津波を知らない人たちに間違いなく伝わってきたことを知りました。こういう活動をしているみなさんが、どんな人生を切り拓いていくのか、とても楽しみです。

●数見先生の膨大な資料をもとにした検証作業、本当にすばらしいと思いました。震災を経験した教員も、あの震災の中、沿岸部と内陸部では同じ宮城の教員でも大きな隔たりがあったのは事実です。積極的に学び、伝えていける力をやはり宮城の教員としてしっかり身につけなければと思いました。

●永沼さんの「苦しい記憶もあるが、楽しい記憶も伝えたい」という思いにハッとさせられました。大川地区の模型を作り、記憶を綴った「記憶の旗」を立てていく取り組み。今でも旗は増え続けるという事実が、この取り組みの意義を教えてくれていると思います。これから自分ができることを考える機会になりました。