mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

「冒険してる?」 岩波少年文庫のねがい 世阿弥の教え

 岩波少年文庫の創刊から、12月25日で70年を迎える。創刊当時の編集者たちの願いが、岩波書店のPR誌『図書』11月号の最後のページ、あとがきコーナー「こぼればなし」の中で紹介されていた。

『この文庫は、日本のこの新しい萌芽に対する深い期待から生まれた。この萌芽に明るい陽光をさし入れ、豊かな水分を培うことが、この文庫の目的である』
『戦後、いたるところに見た草木の、あのめざましい姿は、私たちに、いま何を大切にし、何に期待すべきかを教える。未曾有の崩壊を経て、まだ立ち直らない今日の日本に、少年期を過ごしつつある人々こそ、私たちの社会にとって、正にあのみずみずしい草の葉であり、若々しい枝なのである』

 創刊日が12月25日、クリスマスのプレゼントだったというのだから、ロマンがある。

 さて、私が初めてこの岩波少年文庫を手にとって読んだのは6年生の時。転校した小学校の図書室の一角に並ぶ文庫をみた時だ。「ガリバー旅行記」「ドリトル先生シリーズ」「宝島」などなど、夢中になって読みふけったものでした。
 そして教職について何年か後、学級文庫用にと夏冬のボーナスの一部を割いて、当時発売されていた全巻を購入し、自由に貸し出しするようになった。今、それらの本は物置の一角に収まっている。2人の子どもたちも読み、今は孫たちが興味をもったら譲るつもりでいるのだが、果たして手に取ってくれるか。
 PR誌では70周年を迎える今年のキャッチコピーは「冒険してる?」だという。今を生きる子どもたちと、かつて子どもだったみなさんへの問いかけ、そして、このシリーズのもつ広大で多彩な世界への旅立ち、その誘いでもあると、結んでいます。 

 センターつうしん100号で、田中武雄さんが世阿弥が40歳前後に著した『風姿花伝』の中の一節、「初心を忘るべからず」に絡んで、世阿弥がその後60歳を過ぎて著した『花鏡』の中で「老後の初心忘るべからず」という言葉を残していることを紹介していた。
 「冒険してる?」と問われ、(いやあ、それは無理無理)と思っていたのでしたが、『老後の風体に似合う事を習ふは、老後の初心也』ということであれば、(そうだ! これだって冒険だ) それならば何か自分にも踏み出せることがあるに違いない。老後の初心をまず見つけなければと、真剣に考え始めている昨今です。
                                <仁>

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物置の中の少年文庫の一部