昔は、義父が植えた松などの庭木で埋まっていた庭に、どうせなら果物をと植え替えて果樹園にした。と言っても、猫の額の庭に果樹が所狭しと植わっているだけなのだが。あれから30年。年長の柚子が30歳、無花果が25歳、柿が20歳、蜜柑が16歳などなど。他に新参者の金柑、種から育った檸檬、ブルーベリーやブドウなども順調に育っている。
5月を迎える今頃は、薄緑色の新芽が芽吹き始め、柚子や蜜柑、柿、ブルーベリーが蕾をつける。日に日に蕾が膨らむ様子を眺めると実にワクワクする。早朝、ひんやりした空気と柔らかな光に包まれながら庭でぼーっとする時間はまさに至福の時。太陽の光を浴びた葉に生命の輝きを実感できるのだ。そこに入れ立てのコーヒーがあれば完璧だ。
ブルーベリーの蕾 柿の蕾
しかし、果樹を育てることは時に困難を伴う。無花果の木には天敵の鉄砲虫が巣食う。カミキリの幼虫だ。無数の幼虫が木の幹に入り込み、中を食い荒らす。「カミキリがついたら無花果は枯れるだけ」と言われながらも、毎年穴をほじくっては虫を捕殺する作業を繰り返し、何とかここまで育ててきた。木の主幹はボロボロで見た目にはいつ倒れてもおかしくない惨状だが、毎年葉を茂らせ、秋にはたくさんの実をつけ、ご近所にも喜ばれている。
無花果の新芽 密柑の蕾
手をかければそれに応えてくれるのが植物・・・そう教えてくれたベテラン農家さんがいたが、本当にそうだ。中学校で教えていたときの子どもたちもそうだったなあ、とふと思った。(エンドウ)