mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

2023夏休み こくご講座・報告 ~忘却の彼方となる前に~

 はやく書かなきゃと思いながら、学習会や企画のお知らせは時機を外しては元も子もないのでそちらを優先するうち、書こう書こうと思っていたことはだんだんと忘却へと押しやられ、この夏の暑さで頭もぼんやりしてきています。
 そんなこんなではありますが、気を引き締めて8月5日(土)の『こくご講座』を振り返りつつ、どんな様子だったのか。きわめて私的ですが、その感想を書きます。

 

 今回は、1日企画という長丁場でしたが、午前・午後ともにとてもおもしろかったです。午前中の所長の達郎さん、午後のベテランの千葉政典さんに若手の阿部穂奈美さん、それぞれのこだわりのわかる3人3様の報告。そして、また参加者の年齢幅にびっくり。新任から80代まで、ざっとその年齢差は60歳以上。老若男女が入り乱れ、授業や教材について、ああでもない、こうでもないと言い合うのだから、それだけでも十分おもしろく稀有な光景が展開。ときに若者から疎んじられる年配者も、そんな年配者からは何を考えているかわらないと言われる若者も、ともに場を同じくして一つのこと(授業や教材)を考える、その奥深さ、おもしろさを感じました。
 では、それぞれの報告・提案からどんなやり取りがあったのか。印象に残っていることを紹介します。

 午前の達郎さんの報告は、まさに教師人生で何を大切にしながら子どもたちと向き合い仕事をしてきたのか、その熱い思いも交えての報告でした。話し合いでは、小4教材『世界一美しいぼくの村』の最後の一文、「その年の冬、村は戦争ではかいされ、今はもうありません」を、どのように豊かに子どもたちとイメージ化していくのかが話題になりました。そこでは「はかい」されたものは何なのか、逆に「はかい」されなかった、できなかったものは何なのか、そういうことを作品世界に即しながら子どもたちと交流し、イメージ化していくことの大切さが語られました。同時に、そうだとすれば子どもたちが、ここまでの授業を通じて、ヤモの暮らしている村や市場、アフガンという国をどうイメージしていっているのかも、とても大切なんだと思いました。

 

 さて午後のトップバッターは、千葉政典さんによる小3『サーカスのライオン』の授業提案。これまでの豊かな教師経験と蓄積をもとにした提案は、明日にでも授業ができるような具体的で詳細なものでした。話し合いでは、なぜ「サーカスの」ライオンなのか(アフリカのライオンでもなく、動物園のライオンでもなく)をめぐって活発な意見交換がなされました。また、ライオンのじんざが亡くなった「次の日」の場面を、どう扱うかについても、参加者それぞれの思いや考えが語られました。年配のみなさんの「オレなら、こうする」「私は、こう考える」という熱のこもったやりとりに、いまだ現役のような若々しさを感じました。作品教材をどう読むかとともに、子どもたちとどんな授業をしたいのかということによって、授業のあり方は大きく違ってくるのだなあと感じました。
 提案を終えた千葉さんに「今日の話し合い、おもしろかったね」と伝えると、「オレの授業案についての質問・意見はなかったけど」と一抹の寂しさを漂わせつつ、新任の先生からの「この授業案はすごいです。ぜひ使わせてもらいます」との言葉をもらい、とってもとってもうれしそうな千葉さんでした。

 トリを務めてくれたのは、教師7年目の阿部穂奈美さん。夏休み明けに6年生の子どもたちと取り組む「詩」の授業について、教科書に載っている川崎洋さんの「いま始まる新しいいま」の他に、満員電車のなかでお年寄りに席をゆずるか悩み、葛藤する娘の姿を描いた吉野弘さんの「夕焼け」も取り上げたいと、1時間の授業案を提案してくれました。
 阿部さんは、あえて教科書教材ではない「夕焼け」を取り上げた理由について、読んでいて情景が浮かび、電車に乗ったことの少ない子でも登場人物の(娘)の気持ちを自分に置き換えて想像できること、また子どもたちから様々な意見が出されることが予想されるので選んだ、と話してくれました。この「選択」は、阿部さんが目の前の子どもたちと日々過ごすなかで、何を通して向き合い学び合いたいのかという、一人の教師としてのその思いが集約された「選択」なのでしょう。今では教科書教材以外に、自ら考え選んだ「自主教材」による授業は稀です。その点で、阿部さんの提案はとても「挑戦的」なものと言えます。
 さて、話し合いは、当初の打ち合せどおり阿部さんが選択した「夕焼け」の教材解釈・分析を中心に行いつつも、授業前半で行う予定の「いま始まる新しいいま」についても話し合いに・・・、ついには1時間のなかで2つの作品をやるのはもったいない。それぞれ1時間の授業でやってみたらどうだろうという新たな提案にも。最終的にどうするかは授業者の阿部さん次第ですが、ぜひ授業を終えたら、またその報告も聞いてみたいと思いました。(キヨ)