mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

季節のたより2 カタクリ(その1)

  花ひらくまで 7~8年

 仙台市青葉山カタクリの花はそろそろ終わりのようですが、県内の高山ではこれから咲き出すところもあるので山歩きが楽しみです。
 里山の雪解けを待ちかねたように芽を出し、急いで花を咲かせ実をむすび、わずか2ヶ月あまりで地上から消えてしまう草花たちを、スプリング・エフェメラル(春のはかない命・妖精)と呼んでいますが、その代表は何といってもカタクリの花でしょう。

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 翼のような2枚の葉の間から、一本の花茎を出し、その先にピンクの6弁の花を一つだけ咲かせます。万葉集で家持が「かたかごの花」と歌に詠んでいますが、好天の日に花弁を天にそりあげるように咲く姿は、ちょうど傾いたかごのよう。「カタクリ」は、この「かたかご」が語形変化したものといわれていますが、クリ林を好んで自生し、その葉がクリの子葉に似ているからと言う説もあるようです。

 山道で咲くカタクリの花は一本でも美しく、まして咲き誇る群落の景観は、「春の妖精」といっても過言ではないでしょう。

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 花の終わり頃、群生地で、種子の殻を被った糸状のものが、約10センチほど伸びているのを見つけました。後で調べたら、まったく想像していなかったカタクリの芽生えの姿でした。

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 2年目、その場所で一枚の細い葉が生えて、3年目は少し幅広い丸い葉が育っていました。 
 カタクリが育つ林床に陽がさしこむのは、木の葉が広がる前の2ヶ月ほど。そのわずかの期間に、カタクリ光合成して翌年に育つ分だけの栄養を球根に蓄えなければなりません。毎年、すこしずつ一枚の葉を大きくしながら生長し、球根が大きくなって初めて2枚の葉になりつぼみをつけます。河野昭一博士の研究では芽生えから7~8年目でやっと花を咲かせると報告されています。

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 花が咲くとすぐに実を結び種になります。雑木林が緑の葉でつつまれ、林床に光がささなくなると、カタクリの地上部は枯れて、球根は来春まで地下で休眠します。
 カタクリは、1年のうちのわずか2ヶ月ほど、めぐる季節の、早春の時期を選んで、そのいのちを輝かせているのです。

 教室で、カタクリの花を知っている子がいたら、「〇〇さんが赤ちゃんで生まれたときに、カタクリも芽を出し、2年生に進級する頃に、やっと花を咲かせるんですね。」と話してみてはどうでしょう。カタクリの花への親しみがよりわいてくるのではないでしょうか。(千)