mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

季節のたより1 オオイヌノフグリ(その1)

 きれいな花が「ふぐり」なわけは?

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 寒さが和らぎ、あたたかな陽ざしが地面をてらすようになりました。野原を歩くと瑠璃色の花がこぼれるように咲いています。

  犬のふぐり星のまたたく如くなり
            高浜虚子

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  この句は「オオイヌノフグリ」の花を詠んだものでしょう。早春に咲く花の一つ一つを夜空に明滅する星の輝きに喩えた美しい自然諷詠の句です。

 「犬のふぐり」とは雄犬の「陰嚢」の古語。それが分かると、この句の「ふぐり」と「星」の組み合わせに、どことなくユーモアが漂ってくるからおもしろいです。
 「オオイヌノフグリ」は明治に渡来した帰化種です。英名は「キャッツ・アイ(猫の瞳)」で、その高貴な呼び名の花に「オオイヌノフグリ」と命名したのは牧野富太郎博士でした。美しい花を「ふぐり」呼ばわりとはかわいそうと、この花の愛好者からは不評です。 

 牧野博士が、もともと在来種で「イヌノフグリ」と名づけた花がありました。その花は咲いても気づかないほど小さいのに、2つ並んだ果実は目立ち、「犬のふぐり」にそっくり。山と渓谷社・「春の野草」図鑑では、「思わず笑ってしまうほどよく似ている」と写真と一緒に紹介されています。 
 牧野博士が東京お茶の水の土手で見つけた外来の瑠璃色の花は、「イヌノフグリ」と近縁種だったのです。それで、「イヌノフグリ」の「大形」の花と言う意味で「オオイヌノフグリ」と命名したのでした。

 美しい花のイメージを愛する人からは、瑠璃唐草(るりからくさ)、天人唐草、星の瞳などの別名が提案されましたが、今はこの愛称がすっかり定着してしまったようです。 

 もし、「オオイヌノフグリ」の発見が「イヌノフグリ」の前であったなら、可憐な花の名が名づけられていたかもしれません。(千)

  ※それぞれの写真をクリックすると拡大してみることができます。

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 ※ 研究センターのホームページや「つうしん」の写真の多くは、千葉さんが撮影して下さったも
   です。そのことは、すでに1月のdiaryで紹介しました。とてもすてきな写真をたくさんお持ち

   ので、それらの写真と一緒に、その写真を撮ったときの思いや情景、あるいは被写体の動植物の
           ことなど、何でもよいからdiaryに書いてくれませんかとお願いしていました。その要望に応えて
   下さいました。これからもよろしくお願いします。(キヨ)