無投票で再選を決めた安倍首相は、記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る。『1億総活躍時代』を目指す。そのために強い経済など新たな『3本の矢』を提唱」とA新聞は報じていた。
私は、これまでも言われつづけてきた「アベノミクス」「3本の矢」はどんなことか未だにわからない。その意味はわからないが、首相の「経済第1主義」には国の方向としては以前から危機感をもつ。
経済を第1にと言われると、「自分の生活も今よりよくなるのだ」と呪文にでもかかったように思ってしまうのだろうか・・・。「第1ステージ」なる経済政策で、国民全体の生活がどれだけ豊かになっただろう。見えるのは格差の広がりと、社会の不安定さの増大だ。たとえば、「夏休みになると痩せる子どもが出る」とNPOの方が言っているのを目にしたが、国の経済第1主義がだれもが安心して生きられる政策になっていない事実を語っているのではないか。
「1億総活躍時代を目指す」。なんて空々しいことばだろう。もっと現実を直視して、言葉に誠実さを感じさせてほしいものだ。裏を返せば、私たちがしっかりしなければならないということになるが。
作家の遠藤周作のエッセイの中に次のようなことが書いてあった。
国を誇るというのは経済大国になることではない。日本は金のことしか考えない。商売のことしか考えない国だとヨーロッパ人に言われると、私だってムッとする。
しかし、国を誇るというのは決してそんな経済面のことだけではない。我々が日本を誇るとすれば、もっと道義面や倫理面――そういう表現が堅苦しいのなら、人間性やヒューマニティーの面で世界の他の国に日本が貢献できた時、「日本は誇るに足る国だ」と思えるのではないか。
その意味で、この頃の日本は私にとって誇れる国ではなくなった。毅然とした面が欠けているからである。
「国民をなびかせるには経済第1主義だ」とあいかわらず思われているのも、国民はしょせんカネのエサにみなぶらさがると思っているからだ。そう思われていると思うと私は悔しくて悔しくて・・・。( 春 )