中学校での学習帳を使ってみないかとセールスが来た。これを使うと短時間で要点などを頭に入れられる、とてもわかりやすく問題が書いてあるとかと言う。自分は、じゅくや家庭教師なんかは好きではない。中学校では、部活と勉強をうまく両立させて自分の力でがんばってみるということを考えている。
セールスは、「もし教科書だけで勉強して1時間かかったとすると、この学習帳では20分ていどで終わる」と。つまり、1時間で辞書やいろいろな資料を見て自分なりにおぼえるとすると、この学習帳はわからないところの要点をくわしく書いてあるから、その方が楽だよという。
自分は、これを聞いて頭にきた。これじゃ、自分のために勉強しているのじゃない。その学習帳の力にたよってしまうばかりだ。早く終わってしまえば自由時間も多くなる、これは本当に楽で好きなことができるからいい。でも、それにたよってばかりで自分のための知識がつくか。自分自身の人間をつくるために何時間もかけて辞書をひいてめんどうする方を自分は選ぶ。それでなければ、辞書をひく楽しさをおぼえないし、本当の勉強というものはつかめないと思う。
自分の考えとしてはこうだが、他の人がどうしようと口出しすることではないし、大口をたたくことができないのをひどく残念に思う。
私は2年間S子と一緒に暮らせたことをうれしく思った。そして、これからも、こんな思いをもつ子どもたちを頑張って育てる仕事を創りつづけたいと思わされた日記だった。 どう読んでもらえただろうか・・・。 こんな人間は、今の競争時代には勝てないと一笑に付されてしまうとすれば、やっぱり悲しいな。こんな時代でも、「何時間もかけて辞書をひいてめんどうする方を自分は選ぶ」と言い切るS子のような子を支え、生きられるような教育の場にしてほしい。