mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

冬の学習会・報告  ~ 授業のおもしろさ・むずかしさ ~

 1月6日の冬の学習会では、午前中『センターの部屋 授業のおもしろさ・むずかしさ』と題して講座を行いました。

 センターの学習会やつうしんで話題提供や報告をしてもらっている佐藤正夫さん、中地純さん、小野寺浩之さんの3人の方から、改めて自分の授業づくりについて語ってもらいました。

 佐藤さんは、2年生で取り組んだ文学作品『えんぴつびな』の報告をしてくれました。『えんぴつびな』は、教科書には載っていない自主教材です。なぜ教科書に載っていない自主教材にこだわって子どもたちと授業をしたのか。そう思うに至った経緯や思い、そして授業のなかで子どもたちが見せる姿や発言など、具体の授業場面に触れながら話をしてくれました。

 中地さんは、3年生理科の「チョウの飼育」についてです。デジタル教材や様々な視聴覚教材があるなかで、どうしたら実際のチョウの羽化の瞬間を子どもたちに見せてやれるだろうか。その感動を子どもたちに味あわせたい。そのような思いを持って様々な工夫を凝らし取り組んだ内容を実際に使った教具なども紹介しながら報告してくれました。

 小野寺さんは、一時は石川啄木いのちの人でした。啄木に関するあらゆる本や資料を読み、そして啄木の足跡を追っかけていました。しかし、小学校国語のなかで短歌や俳句に使える授業時間は多くありません。そのなかで俳句や短歌の世界のおもしろさを子どもたちにどう伝えるのか、同時に子どもたちと、どう俳句や短歌づくりを楽しむのか。学年の先生たちと協力して一緒に取り組んだ内容を話してくれました。

 3人の話を聞いて、やっぱり目の前の子どもたちときちんと向き合うこと、そして教師としてのこだわりを持つこと。そのことの緊張関係から授業が創造されるのだということを強く感じました。短い時間でしたが、今年最初の充実した時間となりました。

 年明け早々にもかかわらず快く報告してくださった3人のみなさん、ありがとうございました。(キヨ)

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第3回 仙台市いじめ対策等検証専門家会議を傍聴して

 年末、いじめに関する仙台市の2つの委員会を傍聴しました。一つは、仙台市のさまざまないじめ対策が十分かを検証する「仙台市いじめ対策等検証専門家会議」(12月21日開催)、もう一つは泉区の南中山中で起きたいじめ自死の再調査を行う「いじめ問題再調査委員会」(12月27日開催)です。

 どちらの委員会とも順調に進展しているとは言いがたい状況でした。河北新報は、それぞれの会議について記事を書いていますが、見出しは「いじめ防止 来月1次提言 仙台市・専門家会議 議論深まらず」(12月22日付)、「調査手法また決まらず 南中山中自殺 再調査委 公開で会合」(12月28日付)といった具合です。低調な議論にマスコミもイライラしていることが伝わってきます。以下、記事を引用しながらの感想です。 

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仙台市いじめ対策等検証専門家会議】

 記事は、「同日の会議では学校運営に住民らが参画するコミュニティースクールの在り方に時間が費やされ、市内の中学生3人のいじめ自殺を基にした突っ込んだ議論に至らなかった。」と報じています。専門家会議の事務局からは、いじめ対策として学校と地域や保護者との連携が大切との立場から、主に学校支援地域本部の取り組みについて説明がありました。ところが、どういうわけか河北の記事が伝えるように、話し合いはコミュニティ・スクール中心に進んでいきました。

 いじめ対策として保護者や地域との連携が必要という一般論はわかりますが、学校運営の在り方全体の改変にも関わるようなコミュニティ・スクールの話が、なぜ唐突にこの会議で出てこなければならないのか? たいへん違和感を感じました。もし地域や保護者との連携が必要というなら、まずは既存の学校支援地域本部やPTAの在り方について、その現状と課題が話し合われるのが自然ではないでしょうか。また、ちなみにこれまで仙台市教委は、コミュニティ・スクールについてはどちらかというと消極的で、学校支援地域本部の取り組みを仙台カラーとして積極的に進めてきていました。そのような経緯も考えると、今回のコミュニティ・スクール導入の議論は、いささかいじめにかこつけて導入を促進したいとする(外部からの)作為性さえ勘ぐりたくなります。

 会議後半では、「仙台市は欠けているものはないぐらい対策をやっている。現在の施策を精査すべきで、絞り込みの発想が大切。(この点を)この会合のスタートとして確認したい」との発言もありました。だとするなら、屋上屋を重ね、制度いじりになりかねない新たなコミュニティ・スクールの導入などを軽々に口にするのではなく、これまでの対策について丁寧な議論をすべきなのではないかと感じました。

 また上記の委員の発言を会議の認識とするなら、十分な(すぎる)施策がなぜ有効に機能しないのか。理想論や一般論としてでなく、学校現場や教師の現状や実態をきちんと聞き、踏まえながらその対応を考えることがあってもよいのではないでしょうか。しかし残念なことに、この会議は仙台の学校現場について語れるメンバー構成とはなっておりません。専門的立場からものを言うことは大切だと思いますが、実態をきちんと踏まえないで大丈夫かと心配です。

 次回、1月12日開催予定の第4回会議では第1次提言の話し合いが行われるとのことですが、このような議論で提言がまとめられるとなると、たぶん事務局が主導作成した内容が出されるのでしょう。残念ながら、あまり期待はできそうにありませんが、頭からあきらめたり決めつけてはいけません。真剣な議論が展開されることを期待したいと思います。少々辛口の感想だったでしょうか。委員のみなさんの奮起を願っての感想です。

 自分の目と耳でじかに傍聴し、考えることはとても大切ですね。機会があったら、ぜひ皆さんも傍聴してみてください。

 ※ なお12月27日開催された「いじめ問題再調査委員会」の傍聴については、
  そのうち書きたいと思います。(キヨ)

今週末開催 アーサー・ビナードさん絶賛『コスタリカの奇跡』

 今日から研究センターに出勤。本格的に仕事が始まりました。
 まずは、今週末(1月13日・土曜日)に上映される映画『コスタリカの奇跡』の案内です。春さんや道さんが、昨年から上映準備に取りかかり、12月の宮城県母親大会の講演では、詩人のアーサー・ビナードさんが、この映画をぜひ見てほしいと絶賛していました。

 チラシによると、コスタリカは1948年に軍隊を撤廃、その予算を教育や国民皆保険制度の実現に振り分け国づくりしたそうです。
 中米コスタリカは、ニカラグアなど近隣諸国の不安定な政治状況やアメリカの影響力など米ソ冷戦時代はもちろん、その後も決して安定的とは言えない政情不安を抱えるのなか、様々な危機を乗り越えながら平和を維持してきました。日本も、北朝鮮情勢をはじめ平和をめぐって、現在多くの課題を抱えています。ぜひ、日本と同様に軍隊を持たないコスタリカが、どのように平和を築いてきたのか。私たちが平和について考えるうえで多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

 1日のみの自主上映ですので、ぜひこの機会をお見逃しなく。(キヨ)

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新年に母を想う

 新しい年を迎えた。
 大晦日と元旦と、なにも変わらないと言えば変わらないのに、新年と思うだけで少し気分が引き締まる。そうやって一年一年を心新たに迎えるのも悪くないと思うのは齢のせいだろうか。

 一昨年3月には同居していた義母を、昨年2月に母を見送って、今年、初めて親のいないお正月を迎えた。義母95歳、母105歳の長寿だったので充分長生きしてくれたし、この年になるまで(?)親がいてくれただけでも凄いのに、もう会えないのだと思うとやはり寂しい。とりわけ、お正月のようにみんなが揃う機会には一層いない人が思われるのかも知れない。

 おせち料理を喜んでくれた二人はもういないけれど、今年もひととおりの準備をした。少しずつ省略しながら、これからもつくり続ける気がする。どんどん、くらしの中の「歳時記」がなくなっているような気がするから。

 話し好きの義母は折に触れて農家の日常のあれこれを娘時代の思い出話として語ってくれた。苦労話というでもなく、大地主の農家の育ちなのだが、それをひけらかすと言うわけでもなく、ただありのままの日常を。
 断片的に語られたそれらをつなぎ合わせると、春浅い時期から晩秋、そして雪に囲まれた長い冬ごもりの日々。季節の移ろいに合わせた暮らしぶりが一枚の「歳時記」のように見事だ。

 人間の営みがどんなに自然とともにあるのかも良く分かった。自然の恵みの何一つ無駄にしないくらしの潔さも。農業もまだまだ機械化されていない戦前の農家の日常。そこに感じるのは「豊かだなあ」ということだった。今の感覚で言う「贅沢」とは対極にあるような「豊かさ」だ。
 時には天候の異変で収穫もままならない年もあったようだし、閉塞的な村の暮らしにはきれいごとばかりではない側面もあったに違いないが、共同体としての、人と人の営みのぬくもりが確かに感じられる。

 仙台駅にほど近い街中に育った私だが、季節の変化に心を研ぎすまし、ささやかに野菜を育て、庭先の草花を楽しむ時間を大切に思う日常は、そうした義母とのつきあいの中で培われたように思う。( 道 )

明けましておめでとうございます

 今年の元旦も昨年に続き、よっちゃんと初詣ならぬ台原森林公園へ散歩に出かけました。空気は冷えて澄んでいて、凛と引き締まった気持ちで今年の朝を迎えました。とても町は静かで、みなさん元日の朝をゆっくり家で過ごしているのでしょう。
 目的の佐藤忠良さんの「緑の風」を目指して歩いていくと、2歳から3歳ぐらいの男の子が父親に手を引かれて向こうからやってきます。早起きの小さな息子にせがまれて散歩に出てきたのでしょう。男の子はにこにこ笑顔ですが、お父さんはまだ少し眠そうです。でもきっと、親子のいい思い出になることでしょう。少し心配なのは、息子が覚えているかですけどね。

 昨日から、仕事始めという方が多かったでしょうか。研究センターは、明日の冬の学習会から本格始動ということになります。みなさん、どうぞ今年もよろしくお願いします。(キヨ)
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最終バスと公衆電話 ~10円玉を握りしめて ~

 ずいぶん昔の話になる。夜、アパート住まいをしていたTさんを訪ねた時のことである。今は路線がすっかり変わってしまったが、当時は自宅にもどるためのバス停も近くにあった。

 帰りのバス停に立ったのは最終バスの10時ごろだったと思う。
 こんな時間に場末のバス停で待つ人なんてそういるわけはない。その日も私ひとりだけだった。

 バス停に並んで公衆電話があった。ボックスにきちんと収まっているものではなくて、電話機だけに被いのあるもの。その頃の公衆電話の多くはそんなタイプではなかったかと思う。

 バス停に立った私と前後するように、子どもを背にした若い女の人がその電話の前に立った。受話器を取り、10円玉を何枚も入れて、話し始めた。私はただバスをぼんやりと待っているだけなので、しぜん気はそっちに向いた。話はほとんど耳に入ってこないが、話の相手はその話しぶりから母親らしい。しだいに泣き声になっていった。遠距離通話らしく、10円玉の落ちる音が早い。夜遅いせいもあろうが、その音は泣き声といっしょになるせいか、なんとも切なく響いてくる。どのくらいの10円玉を握りしめていたのだろうか・・・。
 若いお母さんの泣き声は、傍にいる私など目に入っていないかのように高くなる。「ワカヤマ」ということばが耳に入ってくる。「カエリタイ」とも・・・。

 電話が終わらないうちにバスが来た。電話はまだつづいていた。 

 こんな昔の話をなぜとりあげようとしたのか、問われても答えようはない。私にとっては、どういうわけか、今も妙に思い出す光景のひとつなのだ。10円玉を手にした時、フッと浮かんだり、ぼんやりしている時にとか・・・。
 その時、若い母親に握られていた10円は、音をたてるたびに、交換手段としてだけの「物」を超えて「人の心をつなぐもの」に私には思えたからかもしれない。
 私の推理だが、彼女は、何度も何度も、郷里(和歌山?)の母親への電話を考えつづけたにちがいない。10円玉も何日もかかって、ためつづけておいたものだろう。そして、あの夜、とうとう我慢しきれずに公衆電話の前に立ったにちがいない。

 今は電話に10円玉は必要とされない。話そうと思えばすぐ携帯を手にすればいい。用あることもないこともすぐ話せる。でも、人間としてもつべきものをそこで失ってはいないだろうか? 携帯をもっていない者のヒガミか・・・。
 何十年前にもどることができないことも十分承知で言っているのだが、あえて私は、こんな心配は今携帯だけに限ってではなくあるのではないかと思うので言ってみた。

                                   ( 春 )

冬の学習会は、1月6日(土) 7日(日)の2日間です!

 1年があっという間に過ぎようとしています。今年もいろいろお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 ところで、近ごろは物事のもともとを考えたい気分が広がっているのでしょうか。今回の「冬の学習会」講演講師は、哲学者の野矢茂樹さん(東京大学)、そして11月に行われた「みやぎ教育のつどい」の講演講師も哲学を専門とする苫野さんでしたよね。
 今回、野矢さんは、「考える力をつけるために」というタイトルでお話をしてくださいます。
 ということで、年明け最初の私たちの仕事は、この冬の学習会となります。ぜひ1日目・午前中の私たちの企画講座を含め、冬の学習会にご参加ください。学習会の内容は、以下の通りです。

 ◆冬の学習会 開催日:1月6日(土)~7日(日)  会場:茂庭荘

  参加費:教員 3,000円(新任5年目までは半額)
      ┗ 1日目参加 2,000円、2日目参加 1,000円、1コマ参加 1,000円

                      一般・元教師・保育士 2,000円
                      ┗ 1日目参加 1,500円、2日目参加 500円、1コマ参加 500円

                      学生(無料)

      ※ 6日昼食 900円、宿泊 8,000円 の場合は(要予約)

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  タイム・スケジュール

 1月6日(土) 

 ・9:30~(受付)

 ・10:00~12:00(教育講座)

    A.学級づくり「子どもがつながる学級づくり、授業づくり」
    B.国語 「走れ」 「お手紙」 「サーカスのライオン」 「かさこじぞう」の中から
                           模擬授業を行う予定です。
    C.算数「立体を作ろう~正三角形・正方形でどんな立体ができるかな~」
    D.社会「平和を歌おう」日本国憲法施行時の祝意の歌などを歌います。
    E.外国語「外国語の授業づくり入門 ~ 中学1年『文のくみたて』~」
    F.みやぎ教育文化研究センター「授業のおもしろさ・むずかしさ」

    G.  音楽「山田雄介さんの実践から学ぶ ~年長組・リズム・歌の実践~」
     ( 音楽のみ  7日13:00~15:00 会場は 生出市民センターで開催 )

 ・13:00~15:00(開会行事・講演会)
       考える力をつけるために
       講師 野矢 茂樹さん(東京大学


 ・15:30~18:00(分科会)
   ★国語と教育 ★作文と教育 ★算数・数学と教育 ★学校と教育
   ★社会科と教育 ★外国語と教育 ★音楽と教育(会場  山田市民センター)
   ★身体と教育

   ※  以下の分科会は、6日のみの開催
   ★生活指導と教育 ★保健室と子ども ★障害をもつ子と教育

 1月7日(日)

 ・9:00~11:30(分科会)
   ★国語と教育 ★作文と教育 ★算数・数学と教育 ★学校と教育
   ★社会科と教育 ★外国語と教育 ★音楽と教育(会場  山田市民センター)
   ★身体と教育

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