mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

ゲバラが起こした 小さな革命

モーターサイクル・ダイアリーズ』をめぐって

 今年も残すところ後2日。やり残したことは? と振り返ってみる。そして・・・思い出す。
 9月19日付のdiary(おすすめ映画『ブータン 山の教室』)の追伸に、「『映画の本棚』の表紙に描かれている二人乗りのバイクの絵は、何の映画からのものかわかりますか?」と記して、そのままであったことを。
 正解は「モーターサイクル・ダイアリーズ」という映画。ご覧の通り、その一場面が表紙には描かれているのだ。

 

 これで、やり残しは一応解決!。ちなみに映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」は、あのキューバ革命の英雄チェ・ゲバラが、まさに革命家になる前の青年エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナの物語。

 キューバ革命の英雄は、実はアルゼンチン生まれ。大学では医学を学ぶ優秀な?医学生。その医学生のエルネストが、友人アルベルト・グラナードとぽんこつオートバイ(ポデローサ号)に跨り、中南米を旅する物語だ。
 そこには、のちにキューバ革命を成功に導き世界を震撼させる革命家チェ・ゲバラの姿はまだない。世界のどこにでもいる一人の若者の青春が描かれている。恋あり失恋ありドタバタありの珍道中だ。でも、彼はこの旅を通じて、次第に中南米世界が抱え込む矛盾へと目を開いていく。
 ゲバラを描いた映画はたくさんあるが、私はこの映画が一番好きだ(もちろん、見た映画の中でだけど)。

 そして、この映画にはもう一つの忘れられない物語が付随する。
 映画を観たのは、仙台駅東口チネ・ラヴィータ。レイトショーだったこともあって客はほとんどいなかった。映画を集中して観るには最適。ところが、もう映画が始まるという直前に、ドタドタと20歳前後の兄チャンが彼女?を連れて入ってきた。そして私の並びの奥の席に陣取った。兄チャンは足を前に投げ出し、ふんぞり返って坐っている。映画が始まりかけても、二人はなかなか静かにならない。どうみてもこの作品を観たくて入ったというより、二人の時間をつくりたくて映画を利用したという感じなのだ。ついてないなあと、心の中でつぶやいた。

 しかし、その思いは杞憂に終わった。作品の魅力が、私を映画の世界にぐいぐい惹き込み、彼のことなどすっかり忘れさせた。ところが作品の後半、まさに見せ場であるクライマックスシーン(エルネストが川を泳いで横断するシーン)になって、突如、彼の姿が視界に飛び込んできた。彼は空いている前の席に両肘を乗せ、身を乗り出して食い入るようにスクリーンを観ている。時折スクリーンの光が反射して、魅入られている彼の横顔を照らし出した。その横顔は真剣で素敵だった。彼は明かに高揚していた。

 映画が終わり部屋を出ると、先ほどの兄チャンがフロントのスタッフをつかまえ一生懸命話しかけている。彼は映画に魅せられたのだ。そして、その主人公のエルネストが、チェ・ゲバラという後にキューバ革命の英雄となる若者であることを、きっと初めて知ったのだ。彼は、劇場のフロントに置かれたチェ・ゲバラ関連の書籍を指さしながら、これエルネスト?と、スタッフに話しかけている。
 旅を通して青年エルネストが、中南米世界の人々とその現実に出合ったように、彼女と連れて来た兄チャンは、映画を通じてエルネストに、そして革命家チェ・ゲバラに出会ったのだ。
 映画の力ってすごい!そして面白い! そう思った忘れられない一日だった!(キヨ)