mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

『映画の本棚』~ 観てから読むか 読んでから観るか ~

 近島さんの『花と木沓』(9月9日のdiary)と一緒に紹介しようと思っていた、もう一冊を紹介します。

 本のタイトルは『映画の本棚』(同時代社)、著者は佐藤博さんです。元中学校教師で、現在は教育科学研究会(教科研)の常任委員として、教科研の運営や毎月発行する月刊誌『教育』の編集などに携わっています。しばらく前になりますが、宮城の先生方の学習会に講師として来られたこともあります。

 『映画の本棚』は、佐藤さんが教師時代から『教育』に連載してきた映画紹介を一部加筆修正し一冊にまとめたものです。研究センターに集う『教育』読者のなかには佐藤さんの映画紹介を楽しみにしている方が大勢います。私もその一人で、『教育』を手に取ると、まずページをめくるのが佐藤さんのページです。

   

 本書は、2004年から2022年にかけて『教育』誌上で紹介した95本の映画が取り上げられています。本書の特色は、①読めば、誰もがその映画を見たくなること。②教師として人として、日々の生活をおくるなかでの出来事や感じてきたこと、想ってきたことが、その映画の魅力とともに語られること。つまり佐藤博さんという人の息づかいやたたずまいが見えてきます。
 ですから本書は、映画評であるとともに佐藤博さんのエッセーでもあるという、まさに “ 一粒で二度おいしい ” 内容になっています。

 佐藤さんは「おわりに」で、映画について、そして映画と自分について、次のように語っています。

 映画も学校と似ている。文化と触れあい、誰かと出会い、世界が広がり、新しい自分が生まれる。佐野洋子は子どもだった季節に「私は気づかずに人を愛するレッスンをしていた」という(『子どもの季節-恋愛論序説』河出書房新社/2019年)。私たちは学校でも映画館でも同じレッスンを繰り返してきたのかもしれない。だから佐藤忠男は「映画館が学校だった」という(『映画館が学校だった-私の青春期』講談社文庫/1985年)。
 学校で出会ったさまざまな友だちが自分を映す鏡であってくれたように、スクリーンで見つめた数えきれない登場人物たちは自分を照らし、生きる問いを与えてくれた。

 ぜひみなさんも『映画の本棚』を手に取り新たな映画との出会い、世界との出会い、そして自分との出会いをしてみませんか。(キヨ)

【紹介されている映画たち】
さよなら、クロ』『八月のクリスマス』『グッバイ、レーニン!』『スクール・オブ・ロック』『父と暮せば』『誰も知らない』『モーターサイクル・ダイアリーズ』『パッチギ!』『ALWAYS 三丁目の夕日』『『県庁の星』『恋するトマト』『フラガール』『秒速五センチメートル』『シッコ』『ONCE ダブリンの街角で』『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』『最高の人生の見つけ方』『12人の怒れる男』『スラムドッグ$ミリオネア』『ディア・ドクター』『幸せはシャンソニア劇場から』『沈まぬ太陽』『武士の家計簿』『マイ・バック・ページ』『コクリコ坂から』『ヘルプ 心がつなぐストーリー』『いわさきちひろ 27歳の旅立ち』『桐島、部活やめるってよ』『さなぎ 学校に行きたくない』『ハンナ・アーレント』『あの頃、君を追いかけた』『かぐや姫の物語』『小さいおうち』『世界の果ての通学路』『6才のボクが、大人になるまで。』『アゲイン 28年目の甲子園』『サンドラの週末』『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』『家族はつらいよ』『エルネスト』『ガンジスに還る』『新聞記者』『エセルとアーネスト ふたりの物語』『テルアビブ・オン・ファイア』『イーディ、83歳 はじめての山登り』『家族を想うとき』『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』『ブータン 山の教室』『アウシュヴィッツ・レポート』『キネマの神様』『茲山魚譜 チャサンオボ』『ローラとふたりの兄』ほか