mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

『こくご講座・冬 ~ウっシっ詩~』 (その1)

 1年の始めや終わりに、子どもたちと読みたい詩
                 ~ 学習会での話を中心にしながら ~

 3月入ると、どの教科も復習やまとめの単元となり、これまで足りないと感じた部分を工夫しながら授業することになると思います。なかなかまとまった時間をつくっての詩の授業はできないかもしれませんが、ちょっとした時間や授業の工夫で詩を子どもたちと楽しむことはできそうです。
 一つの授業として取り組めなくとも、みなさんが知っている詩を読んでやったり、音読したりするだけでもいいのではないでしょうか。『こくご講座・冬~ウっシっ詩~』の内容を中心にしながら、詩の学習についてまとめてみました。(正)

◆ 季節を感じる

 はるを  つまんで
      宮沢 章二

はるを つまんで とばしたら
しろい ちょうちょに なりました
もいちど つまんで とばしたら
きいろい ちょうちょに なりました

しろい ちょうちょは あおぞらの
くもと いっしょに きえました
きいろい ちょうちょは なのはなに
かくれて みえなく なりました

はるを つまんで とばしたら
しろい ちょうちょが そらいっぱい
もいちど つまんで とばしたら
きいろい ちょうちょが のにいっぱい

(『詩のランドセル 2ねん』らくだ出版)
   *声に出して読み合いたいですね。

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    安西 冬衛

  てふてふが一匹 韃靼海峡を渡って行った

この詩の初出は、

てふてふが一匹 間宮海峡を渡っていった
 軍艦北門ノ砲塔ニテ

となっています。「間宮」を「韃靼」に直し、詞書きを削り取っています。「ちょうちょう」と書かずに「てふてふ」です。その違いがイメージをどう変えるのでしょうか。

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 小学生
     堀口 大学

  先生
植物学はうそですね
樹木もやはり笑うもの
梅が一輪咲きました

*なんてかわいい子どもでしょうね。こんな子を育てたいものです。

◆ T さんが、高学年なら最後に取り組みたいという詩 

  1年間積み重ねてきた力を使ってこの詩に向かわせたいと、Tさんは言います。そして、取り上げる意図を次のように語りました。

 簡単に「死ね」とか「自殺する」と口にする現在の子どもたち。この詩の授業を通して親が子をどういう想いで生み育ててきたのか。親の子への愛情と「死」というものの持つ意味について子どもたちに考えさせたいのです。授業参観でこの詩を取り上げることで、親と子の対話(生み、育ててきたことについて)をお願いするのです。

  靴  下
       室生 犀星

毛糸にて編める靴下をもはかせ
好めるおもちゃをも入れ
あみがさ、わらぢのたぐいをもをさめ
石をもてひつぎを打ち
かくて野に出でゆかしめぬ。

おのれ父たるゆゑに
野辺の送りをすべきものにあらずと
われひとり留まり
庭などをながめあるほどに
耐えがたくなり
煙草を噛みしめて泣きけり

◆ 4月のスタートは、これという S さん

 「主に6年生を持った時だけの限定です」と断ったうえで、毎朝続けている詩の学級通信の話をしてくれました。例えば、4月10日 NO.1に次の詩を取り上げていました。この詩を読んでやりながら、Sさんが日常の中で気付いたことや感じたことを語りかけるそうです。決して訓示ではありません。子どもたちは卒業までに192の詩と出会うことになります。文化を通した対話が1年間続くのです。

 支  度
     黒田三郎

何の匂いでしょう
これは

これは
春の匂い
真新しい着地の匂い
真新しい革の匂い
新しいものの
新しい匂い

匂いのなかに
希望も
夢も
幸福も
うっとりと
うかんでいるようです

ごったがえす
人いきれのなかで
だけどちょっぴり
気がかりです
心の支度は
どうでしょう
もうできましたか

『新選黒田三郎詩集』思潮社

◆ 4月の授業参観は、これというOさん

 緊張する最初の授業参観。しかも6年生。タイトルと赤字のことばを隠し、1行目だけ提示して「ビールには何が合うと思う?」と教室の空気を一変させます。もちろん、保護者も巻き込むので笑いも起こります。何とか「枝豆」を引っ張り出したら、つぎの「カレーライスには?」と進んでいきます。ある種6年生の語彙力が試される部分もあるのでしょう。そうして、最後の「ほほえみには?」で、Oさんのこの学級への願いが語られるにちがいありません。
 しかし、このような言葉遊びはあくまでも導入で、子どもと向き合わせたい詩の授業を1年間の中に準備していくそうです。

 ほほえみ
      川崎  洋

ビールには 枝豆
カレーライスには 福神漬
夕焼けには 赤とんぼ
花には 
サンマには 青い蜜柑の酢
アダムには いちじくの葉
青空には 白鳥
ライオンには 縞馬
富士山には 月見草
塀には 落書
やくざには 唐獅子牡丹
花見には けんか
雪には カラス
五寸釘には 藁人形

ほほえみ には ほほえみ

            (次回に、続く)