mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

コンピューター VS 人間   ~静かな正月に想う~

    今回の正月は、息子・娘一家がコロナを考え、帰ってこないことになり、久しぶりの静かな正月を過ごすことになりました。そんなこともあり、年末に本屋へいき、数冊の本を買い込んできました。その中の一冊に、科学雑誌 Newton1月号があります。表紙に書かれた「コロナ時代の心理学」という文字に惹かれたのでした。先日、やっと読み終わったのですが、その中で面白いと思ったのは、コロナとは全く関係のない、「奥深い『数独』の世界」というコーナーでした。

 「数独」あるいは「ナンプレ」といえば、おそらくほとんどの人が一度はチャレンジしたであろうパズルの一種です。かく言う私も「ナンプレ」が好きで、雑誌や新聞に載っているのを見つけたら鉛筆をとり出します。現役の頃は、宿題や自習の時に、魔方陣と共に「ナンプレ」を子どもたちに与えて解かせたりしてました。

 Newton誌によると、1979年にアメリカの雑誌で「ナンバープレイス」としてまさに数独と同じパズルが掲載されたそうなのですが、まったく人気が出ず、すぐに姿を消したのだそうです。そして1984年になって、日本のパズル誌がそれを見つけ、「数字は独身に限る(数独)」として載せたところ大反響で、今や「sudoku」として世界に広まっているというのです。

 そして何より興味深かったのは、2013年に当時、東京大学に在籍していた渡辺宙志博士がつくった「コンピュータを使ってつくった世界一難しい問題」です。コンピュータが通常用いるバックトラッキング法。つまり「可能な組み合わせをしらみつぶしに調べる」方法で解くと数万回もの計算が必要な問題であり、人間に解けるわけがないと考えられたのです。ところがこの問題、解いてみたら呆気なく解けることが分かったというのです。
 ちなみに数独の組み合わせの数は、66垓7090京3752兆0210億7293万6960通り、つまり22桁あることが、スーパーコンピューターで計算されたそうです。

 数独ナンプレ)では、一つの完成形に対して、どの数字をどこに配置しておくか、つまり初期配置によって、複数個の問題をつくることができます。いいかえれば初期配置が異なっていても、最終的に同じ解にたどり着く問題は複数個あるということなのです。このような初期配置まで考慮して数独の問題の総数を算出することは、現在のところかなり困難だと書かれていました。ちなみに「解が必ず一つに定まるときの初期配置の数字の最小個数」は、17個というのが現在の研究到達なのだそうです。

 では何故、「コンピュータを使ってつくった世界一難しい問題」を人間は簡単に解くことができたのか。
 人間はコンピューターのようにしらみつぶしに解を探索したりせず、ブロックや列に着目しながら空いているマスを埋めていく。不要な計算はしない。つまり、コンピューターで解くと計算量が必要な問題が、人間にとっては難しいとは限らないというのです。
 コンピュータと人間とは違うのです。ですから本当に世界一の難問をつくるには、人間の思考をアルゴリズムに落とす必要があって、これは今のところできませんし、かなり難しいと書いてありました。
 人間とコンピュータは違うからこそコンピュータの利用価値があるのであって、コンピュータと競争したり、これに敗けることを恐れたりするのは間違っているということが、ここからもわかりました。 

    人工知能(AI)と人間では、もう一つ、昨年8月に行なわれた将棋のタイトル戦のひとつ「王位戦」の七番勝負で、藤井颯太が「受け師」の異名を持ち、守備のうまさにかけては随一のベテラン木村一基王位に挑んだ三連勝のあとの最終戦。あと1勝で王位を獲得するという一番を思い出します。
 その戦いでは藤井が指した封じ手が話題になりました。普通、封じ手は無難な手であることが多いのですが、藤井がさした一手は盤上で最も戦力の高い飛車を、価値の低い銀と刺し違えてしまう、常識はずれの手だったからです。

 実は、藤井の封じ手は全く予想されていなかったわけではありません。人間の常識では選びづらいその一手を、最善手としてあげていたのは、この勝負を生中継していた動画配信サービスが開発した「SHOGI AI」でした。人工知能が導き出した一手を、人間・藤井颯太が短時間で見つけ出したのです。人間まだまだすてたものではありません。<仁>