mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

仙台市の教育施策が決められる! これでいいのか?

  ◆◆ 正さんの傍聴へんろ ◆◆

  現在、(仮称)仙台市教育プラン検討委員会が5月から月に一度開かれています。この会では、来年度から5年間の「仙台市の教育に関する方向性とそれを具体化する施策」を決定する基になる報告案作成の話し合いが行われています。それは正確に言うと、「仙台市のまちづくり」と一体となっているので、非常に分かりづらいものです。しかし、教育現場にとっては、これほど重要な会議はないかもしれません。ですから、検討委員11名中7名が教育関係者です。会は教育委員会の原案に検討委員が意見を述べる形で進行しています。このような会議が行われていることなど現場の先生方は誰も知らないと思われます。 

 わたしは、「仙台子ども体験プラザにおける体験学習」や「故郷復興プロジェクト」が学校に要請されてきたとき、とても違和感を覚えました。震災直後の学校では、自分たちに何ができるのか、何を学ばせたらいいのか、それぞれの学校で試行錯誤が行われていました。そういう中に、「これをやってください」と言わんばかりに活動内容が降りてきたのです。なぜもっと学校現場を信用し、それぞれの取り組みが生まれるのを待てないのか。一律に同じことをさせる施策は、教員個人だけでなく学校全体の教育力を削ぐことになると思っています。ですから、いったい誰が、どんな考え方で決めたのか、と疑問だらけでした。限りある時間の中で、子どもたちと一緒になって意味のある活動を作りたいと思っていましたので、教育施策が天から降ってくるように感じていました。そんなわけで、仙台市の今後の教育施策がどのような議論によって決められていくのか、傍聴してみました。以下は4回の傍聴を通して感じたことです。尚、話された内容は多岐にわたっていますが私が大事だと思った部分のみを取り上げています。ご了承を。

《中学校長の意見》
①「〇〇教育の推進という施策が、学校にこんなに求められていたのかと改めて知り、こんなにできるのだろうかと思う。現場はもう限界。もう少しスリム化できないだろうか。」
 

 この意見は、『豊かな心の育成』という一つの項目に、「いじめ防止対策の推進」「自死予防教育の推進」「震災に伴う児童生徒の心のケアの実施」「学校における音楽・芸術の鑑賞会の実施」「道徳教育の推進」「福祉教育・人権教育の推進」「心のバリアフリー推進」「情報モラル教育の推進」「インターネット巡視の実施」と並んでいたからだと思いました。他の項目についても調べてみると、約40ほどの施策が求められています。教職員が授業に集中できる環境にしてほしいという現場の切実な叫びだと思いました。

 この校長さんは検討会が重なっていっても、「ここでの話し合いの流れは、これまでの施策に足りないところを付け足すという作業になっている。学校に求められるウエイトが益々ふくらむばかりだ。事務的な削減ではなく、大きなものを減らすことが必要だ。」と訴えました。

②「タブレット端末を一人一台持たせるのだが、どう取り組むのか」 

 事務局からは「学習の中で使っていく。あらゆる教科において、資料の作成だったり、どの授業でも使えるようにしたい。端末をどう使ったら学習に生かせるのか探っていきたい」という返答でした。コロナ禍を受けて遠隔授業の必要性が高まっているので、何とも言えないのですが、これは本末転倒です。その授業をふくらませるために、どうしてもタブレットが必要と判断されたときに、初めてタブレットが生きるのではないでしょうか。ですから、質問者の意図は、集団で学ぶことやお互いの表情を見ながら関係を築くことがないがしろにされないかという危惧を確かめたかったのではないかと思いました。 

《小学校長の意見》

①「日々の授業の取り組みを充実させることができるような環境整備が必要ではないか。いろいろな教育施策は載っているが、普段行っている授業や活動がないがしろにされているように感じる。」 

 単発的な教育施策はあくまで点であり、その点をいくら並べても子どもを育てることはできないのです。それよりも毎日の授業が栄養となっていくのです。そのことが全く重要視されていないことを指摘したのです。現場の声をしっかり反映させようとする姿勢に拍手したくなりました。しかし、事務局の「そのためにも研修を充実させ、学力テスト分析から得られた結果を授業に結びつけられるような施策を充実させます。」これは駄目だ!とがっかりしました。全ての教育施策とは言いませんが、お金をかけて授業の邪魔をしていることになぜ気がつかないのかと唖然としました。 

②「いじめの7割は小学校で起こっている。中学校でのいじめは小学校に起因していることが多い。早い段階で指導するために小学校での35人以下学級は急務ではないか。」 

  この日出された資料の中に「教員アンケートにおける主な意見」(対象は市立学校長)というものがあり、その中にも「小2から小3に進級する際、学級減により子どもの様子が悪化することが多い。教員が子ども一人一人と関わり合う環境を作るためにも35人以下学級を拡充すべきである。」と要望されていました。残念ながら事務局からの返答はなく、政治家のごとき「国の動向を見据えてまいりたい。」とのこと。行政の気概というものがないのかと声を出したくなってしまいました。 

 コロナ禍によって学んだ一つに、本当に必要な行事は何か、行かなければならない出張はどれだったのか、改めて考えているという声を多く聞きます。そして、何事もなかったかのように前と同じ施策に翻弄されるのだけは止めてほしいという声も。ここで取り上げた校長さん方の意見が、教育プランにきちんと反映されることを願うばかりです。

 10月末に中間案が出され、パブリックコメントが始まる予定です。組合と相談して教職員全員に知らせなければと思っています。(2020.10.22)