mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

きおっちょら だより2

「きおっちょら」って、こんなとこ(その2)

◆具体的な活動について ~主体的に決めて、取り組むことを大切に~
 きおっちょらは仙台市地下鉄北四番丁駅のすぐ近くにあります。
 事業所そのものは小さいのですが、地下鉄を使って、出かけることができます。博物館や美術館にもすぐに行けます。仙台市文学館は台原森林公園の散策を兼ねて行きました。調理施設がないので、公共施設の調理実習室を借りて調理をしたこともあります。

 いろいろなことに挑戦しますが、活動の進め方は基本的に決まっています。活動の初めに、計画を立て、実際にやってみて、終わったら振り返りをするというサイクルを繰り返し積み重ねていきます。

《活動 その1》
 「みんなの積み木」をまねてやっています。一人で取り組むのではなく、出題する方が自分で考えて、白木のブロックで問題を作ります。回答する方は、形ごとに色分けしたブロックを使って、考えていきます。これが、結構難しいです。使うブロックの数を制限して出題して、少しずつ増やしていきます。

 利用者さんは、漢字などを読むのが苦手だったり、道を覚えられなかったりということで困っているようなので、形をとらえる感覚を養えたらと思って始めました。楽しんで取り組める工夫をすることが課題です。
 

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  ブロックを使って、交代で問題を出して、答えを考えます。

《活動 その2》
 自分で調理ができたらいいなと考えて、事業所の中でもできる、「ごはんとみそ汁をつくる」プログラムを1週おきくらいに行っています。
 お米を炊くのは、だいたい決まった通りにできますが、みそ汁は、具を考えることに個性が出てきます。11月には芋煮も作ってみました。利用者さんは二人とも、家で調理することはないと言うことなので、自分が食べるものは自分で作ることができるようになってほしいと思って取り組んでいます。

 おかずをしっかり作るときは、公共の調理実習室を借りて行うこともあります。そのときは調理実習の計画を立て、予算や調理の手順も調べて行います。終わったら、経済社会の取り組みとして、かかった金額を計算して、一人あたりの金額を出すようにしています。

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       ご飯とみそ汁をつくりました。

《活動 その3》
 事業所は、狭いですが細長いので、それをいかして「健康吹き矢」に取り組んでいます。塩ビ管を使った手作りの道具を使っています。矢が的に当たったときの「パシッ」という音が出ると気持ちがいいです。
 初めは的に当たるかどうかとドキドキしながらやっていますが、自分の好きな距離でやって良いとしているので、当たったときは、にっこりと良い顔になります。

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       「健康吹き矢」、当たったよ!

《活動 その4》
 利用者さんは、ものを作ったり、絵を描いたりすることが苦手な方が多いので、どんなものを活動の題材に選ぶのか工夫が必要です。リースを作るときは、葛のつたを使いました。

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リースをつくったり習字をしたり、このときは地名の習字でした。

 どんな活動をするか前月に決めます。大まかな内容で、毎日の予定を利用者と支援員が相談して決め、前の週に、次週の予定を詳しく決めます。
 利用者さんが活動について分からないことがあったら細かく説明し、本人が理解できるように努めていますが、それでも、定期の面談で話を聞くと「しんどかった」という感想が返ってきたりします。
 職員会議では、うまくいったということを本人に返して、自分のやっていることが楽しいと思えるように活動を進めていこうと話し合ったりしています。

 12月になって、パソコンで文章を作りたいという要求を話してくれるようになったので、活動の中で生かせるものを考えました。
 「写真日記」をやってみようということになり、さっそく見本を試作して提案しました。やってみてもいい、というので、公園に出かけて写真を撮って、それをもとに作ってみました。出来上がった日記は、写真を意識して撮ったので、今までよりもいい作品になっていて職員も感心しました。名前は出さないからフェイスブックに出してもいい? と聞くと、「それはいやです」とのことでした。自分の顔や名前だけでなく、後ろ姿や作品も人前に出したくないと言います。自信が生まれるまで時間をかけていきたいと考えています。

◆これから 〜青年期教育の原点を大切にしたい〜
 11月の末に、突然電話があり、きおっちょらを利用したいとのことでした。面談をして話を聞いてみると、今年の7月まで就労継続支援事業所B型を利用していたがやめたので、市役所でパンフレットを見て、ここに通いたいとのことでした。
 きおっちょらを青年期の学びの場にしたいと考えていましたが、病気だったとは言え壮年期の方の利用は想定外でした。けれども、例えば歳がいっても夜間中学に行きたいという高齢者がいれば受け入れているので、ここでもできることはあるのではないかと考えました。通い始めて3週間になり、活動の中でうれしそうな表情を見せてくれることもあります。この場所が、心地よい居場所になってきているようです。
 地域には、いろいろな人が困っていて、ひとりでいる方がもっといるのではないかと思います。どうしたらその方たちと繋がることができるのか、まだこちらの力不足を痛感しています。
 ひきこもっている方や就労してやめた方が、社会に出るためのステップアップの場として、きおっちょらを使ってもらうのはもちろんですが、同時に、障害者の青年期教育の実践を作っていきたいと思います。

 2020年4月には、支援学校を卒業する生徒が入ってきます。これからも、新たな取り組みを進めていかなければならないと決意を新たにしています。
 18歳以上の青年期の教育ですが、学校時代にいろいろと問題を抱えていることを感じます。これから定期的に障害者の学びの場のようすをお知らせしたいと思います。ご意見をいただけるとありがたいです。(さくま とおる)