mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

きおっちょら だより1

 昨年の末頃だったでしょうか。運営委員のさくまさんから、自分たちの始めている仕事についてもっと多くの人に知ってもらいたいのだけど・・・という話を伺いました。
 このDiaryは、私たち研究センターの日々の出来事や取り組み、思いを伝えるだけでなく、教育・子育てに関わるみなさんの活動の紹介や経験交流の場にもしていけたらと思っています。
 そこで、さくまさんたちの日々の取り組みについても、気負わず、無理せず、カタツムリを意味する「きおっちょら」のように、ゆっくり、ゆたかに綴ってもらうことにしました。今回が1回目です。(キヨ)

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「きおっちょら」って、こんなとこ(その1)

 きおっちょらは、仙台市地下鉄北四番丁駅のすぐ近くにあります。障害者の教育年限延長を求めて2016年3月にNPO法人を立ち上げ、2018年4月に生活訓練事業所「きおっちょら」(イタリア語でかたつむりのこと)を開所して1年9カ月が経過しました。
 この春で開所3年目を迎えます。福祉型専攻科をめざしてやってきました。これまでの経過と実際の活動について、まずは紹介します。

◆きおっちょらの開設 ~障害者の学びの場づくり~
 障害があっても、学びたい、きょうだいと同じようにキャンパスライフを謳歌して青春を楽しみたい、その願いにこたえるためには今の学校教育制度の中でもできることがあります。その中でも、すぐにできることは、特別支援学校高等部に専攻科を設置することです。
 けれども、現状の特別支援学校に専攻科をつくる施設の余裕はありません。知的障害の児童生徒が通う支援学校高等部に専攻科をつくることは全国を見渡してもそれほど進んでいないのが現状です。

「高等部に専攻科をつくり、教育年限を延長してほしい」、その願いに応える道がいくつか生まれてきています。
 8年前に和歌山のフォレスクールからはじまり、40カ所余りの福祉型専攻科が作られています。福祉制度の自立訓練(生活訓練)事業を使って障害者の学びの場としてたくさんの学生たちが、集い、遊び、学んでいるところがあることを知り、宮城にもぜひ障害者の学びの場をつくろうと、その運営母体のNPO法人を設立したのが2016年3月でした。
 事業所の開設まで時間がかかりましたが、2018年4月に仙台市の中心部で交通の便が良いところに、小さい事業所を開いて、活動を始めました。
 私たちは、青年期を大事にしたいと思っています。それは、次のような思いからです。

・人間にとって、青年期は “ 第二の誕生 ” と言われるように、それ以降の生き方に
 大きな影響を持つ時期です。
・障害があることを理由に、高等部を卒業したら、すぐに就労しなければならない
 のでしょうか? 18歳で自分にあった職業を決めることは、わたしたち自身の
 ことを振り返ってみても難しいことです。障害を持っている生徒たちにとっては
 なおさらです。学校から社会への移行、子どもから大人への移行、この二重の意
 味での移行期間が必要な時代になってきていると思います。人生100年として、
 1年を1㎝と考えれば、わずか6~7㎝の間で猶予を得ることは誰にでも必要な
 ことです。
・学校での多くの時間を就労に向けての作業学習や実習に当てるだけでなく、教科
 学習を通して、しっかり自然や社会、音楽や文学などの文化を学んでいくことが
 大切にされなければならないと考えます。
・学校で学ぶことは、友だちと友情をはぐくみ、真理を探究すること、他人に対す
 る尊敬や愛情を深めていくことではないでしょうか。他人を信頼することを育ん
 で、主体的に他人とかかわって、人間関係を作っていくことを大切に考えたいで
 す。
・遊ぶこと、失敗すること、ちょっと背伸びしてみること、他人と折り合いをつけ
 ていくこと・・・、余暇や無駄と思われる時間が後から振り返ると輝いている、
 みなさんも、自分のこれまでの経験を振り返るとそうだったと思えるのではない
 でしょうか。青年期に一見無駄と思えるようなことをたくさん経験することが、
 心を大きく成長させるのではないでしょうか。
・自分たちが青年期にやってきたことを振り返れば、誰もが経験することで、それ
 を知らないで成人期、壮年期になっていくことは、人生の彩をなくしてしまうよ
 うなものです。

◆福祉事業所の運営に四苦八苦
 開所して2カ月ほどは、利用者はいませんでした。最近まで利用者は1人でしたが、今年の11月末にようやく二人になりました。
 事業所の運営について、よく「補助金が出ているんでしょう」「助成金はどれくらいもらってるの?」と、言われます。それは、ずいぶん前の時代のことなのです。
 今の福祉制度は、とても簡単な表現にすると、 “ 事業の認可は厳しく、認可を得たら利用者は自力で獲得しなさい。事業所の運営は自分たちの努力でやってください ” と言ってもあながち的外れではないと思います。利用料は利用者の人数に応じて、法律で決められた金額が自治体から支払われます。つまり、利用者がいなければ収入は入らないのです。
 利用料の請求は電子システムになっていて、分厚いマニュアルがあります。事務の仕事には縁がなかったので、請求事務になれるのにだいぶ時間がかかりました。加えて、福祉事業も営利事業ということで税金もかかってきますし、提出する書類もたくさんあって、“「男はつらいよ」のタコ社長がフーフー言っていたのはこれか”と、思うこともあります。(さくま とおる)