mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

第1回 仙台市いじめ防止等対策検証会議を傍聴して

 仙台市は、今年の3月12日に制定した「仙台市いじめ防止等に関する条例」にもとづき、行政の新たな取り組みの一つとして「仙台市いじめ防止等対策検証会議」(以下、検証会議)を設置し、今月8月1日に第1回の会議が持たれました。第2回会議は、なんと明日8月21日です。ぎりぎりの報告となりますが、傍聴しての雑感を述べたいと思います。

 冒頭に記したように、検証会議は「仙台市いじめ防止等に関する条例」にもとづき新たに設置された機関です。その設置目的は「市長および教育委員会が講ずるいじめの防止等のための対策について検証し、及び検討を加え」、その結果を市長に毎年度報告するものとされています。要するに、現在取り組まれているいじめ対策が効果的に機能しているのか否か、機能していないとすればどのような改善や新たな取り組みが必要なのかなどを検証・検討するということです。また市長はその報告を受け必要に応じて、いじめ対策の見直しを行うことにもなっています。

 検証会議は新たに設置された機関であることに間違いありませんが、実はこれまでも「仙台市いじめ対策等検証専門家会議」(以下、専門家会議)という、非常に似た名称の会議が行われていました。設置目的もほぼ同じですし、また今回の会議で選出された会長の氏家靖浩さん(仙台白百合女子大学)、副会長の庄司智弥さん(弁護士)は、二人とも専門家会議の委員でもありました。ですから検証会議はまったく新しい組織というより専門家会議を継承するものとして、その運営や審議の進行をみていく必要があるだろうと感じました。同時に、そうは言っても新たな組織なのですから、構成メンバーを含め、そこでの新たな議論の内容とゆくえついてみていく必要もあるでしょう。

 さて、そのような視点から第1回の検証会議を見た場合に、いくつか気がついたことがあります。
 一つは、仙台市教育委員会のいじめに関する第三者機関「いじめ問題専門委員会」の委員長を2017年春まで務め、辞意を表明し辞められた本図愛実さん(宮城教育大学)が改めて本会議の委員になられたということです。本図さんは、いじめ自死の遺族との間で、その報告書の内容をめぐって議論のあった際の委員長でもあります。その本図さんが、改めて委員になられたということの思いや決意がどのようなものなのか。
 自己紹介のなかでは《先生たちの心の余裕が必要》と述べ、本会議では、各学校におけるいじめアンケートが本当に意味あるものになっているのか、そのことを教師のアンケート処理とその後の対応への労力などの視点から発言・質問し、また事務局を含め若干の議論がなされました。議論のやり取りを聞いての印象ですが、本図さんのなかにはアンケート以外の、もっと違う形の取り組みや先生たちの時間の創出が必要だとの思いがあるのではないかと感じました。個人的には、その点をきちんと聞いてみたいと思いましたし、また大学内外で学校教職員との接点も多いだろうことを考えれば、先生方の働き方改革も叫ばれるなかで、そのような点からも先生方の声を生かすような発言・提案がなされることを期待したいとも思いました。

 二つに、専門家会議で目玉施策として打ち出された(新聞などでも報じられた)「コミュニティースクール」が、なぜか検証会議の検証・検討リストからは除外されていることです。専門家会議でコミュニティースクールが取り上げられたときは、《なぜ、いじめ対策としてコミュニティースクールが提案されるのか》、その唐突さに違和感を感じました。同会議ではコミュニティースクールがいじめに有効であることの実証的なデータや実践が示されることがほとんどないなかで、保護者や地域との連携や協力が必要との委員たちの印象論のなかで決まった感じでした。そのコミュニティースクールが、今回の検討会議では不問に付されることになります。地域や保護者も巻き込んで、学校の在り方そのものを大きく変える施策であるにもかかわらず、なぜ検証も検討も行わないのか。そもそもコミュニティースクールは、いじめ対策のために打ち出され提言されたものではありません。専門家会議は、そのようなコミュニティースクールを、いじめにかこつけて打ち出したという印象を強く感じます。そういう代物だからこそ、実は検証も検討もできないのかもしれませんが・・・。
 すでに「コミュニティースクール」については、その施策立案の舞台は仙台市教育委員会(以下、市教委)に移行しています。市教委のなかで、いじめに関わってどのような議論がなされるのか否か、そういうことを本検証会議との関わりでみていく必要もあるかと思います。
 また市長部局の教育総合会議にみられるように教育に関する首長の権限と発言力が大きくなってきている中で、教育施策を決定実施していく際に、首長および首長部局はどのような内容について、どこまで発言する権限があるのか。その点についても、この検証会議の動向なども踏まえながら考えていく必要があるでしょう。

 検証会議のメンバーは正副会長と本図さん以外には、仙台市校長会副会長の志賀琢さん(幸町中学校長)と公認会計士の古川直磨さんです。
 この日の会議では、いじめ防止対策のうち「いじめ対策専任教諭の配置」「児童支援教諭の配置」や、先のいじめアンケートなどを中心に話し合いがなされました。
 ちなみに志賀さんは学校長として自身の学校での実情や実態を中心に発言していました。学校現場の貴重な発言として受け止める必要がある一方で、必ずしも学校現場全体の意見ではないという点も踏まえておく必要があると思いました。また志賀さんは事務局の市教委メンバーにお伺いを立てるような姿がみられ、少し気になりました。検証会議は第三者機関なのですから、市教委に気兼ねすることなく現場からの発言をしてもらいたいと思います。
 公認会計士の古川さんは、自己紹介のなかで《公認会計士の自分が委嘱されたのは、様々な政策の目的設定に対しての効果がどうなのかということで期待されてのことだと思っている。そのような点から発言していきたい》と話されました。いじめ対策の効果を何をもって効果がある無しと判断し評価するのか。財政支出にともなう費用対効果的な視点だけでなく、教育の条理も踏まえながら検証を進めてもらいたいと思いました(例えば、今回の会議の中で話題となった学校アンケートは、財政支出としてはゼロです。費用対効果的な視点で言えば、その場合この施策の検証・評価はどのような視点・観点でなされることになるのか。本図さんは、その検証・検討の視点として教師のアンケートに関わる様々な労力と時間の視点を提起されていたように思いました)。

 最後に、会議全体の進行に関わって気になったことを述べると、1回目の会議にも関わらず具体的な対策について話し合いが行われたことは、たいへん意欲的な運営・進行とみることができますが、議題となった個々のいじめ対策について具体的・実証的なデータが提示されない中での議論は、各委員の個人的体験や認識にもとづく印象論のレベルを超えるものではないと言わざるを得ません。ぜひ検証・検討に値する議論を望みたいと思います。(キヨ)

 明日の第2回検証会議は、13:30~、仙台市役所本庁舎2F 第4委員会室で行われます。ぜひ関心を持たれた方は、傍聴してみてはどうですか。傍聴ですから楽しい会議とはいえませんが、どのような議論や審議の中で様々な施策が決定され実施されるに至るのか。そういうことを市民として、この目で見ることに意味を見いだすのであれば、ぜひ行って見て下さい。