mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

季節のたより29 ヤマボウシ

 新緑に似合う白い花、食べられる木の実

 教室の窓から遠くの山々が見渡せる学校に勤務したことがありました。
 初夏から梅雨期になると、山々が美しい緑におおわれます。その緑の中に、白い花が出番を待って咲き出します。ウワミズザクラ、ホオノキ、ミズキ、ツルアジサイヤマボウシなど、まるで緑に白が似合うことを知っているかのように、次々に咲き出すのです。教室の窓から見える白い花を指さして、こどもたちと「あれは何の樹の花?」と当てっこするのが楽しみでした。

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   緑の葉を埋めるように咲かせる、ヤマボウシの白い花

 遠くから見て、すぐわかるのはミズキの花でした。ミズキは、枝に咲いた花が絨毯のように広がり、それが段々に重なって見えます。それから、ミズキより少し遅れて咲き出すのがヤマボウシの花です。ヤマボウシもミズキと同じように、何段かに重なって見えます。ヤマボウシの白い花は、緑の葉の上を埋め尽くすように咲いて、まるで夏山の残雪のように輝いて見えるのでした。
 春を代表する花がコブシなら、ヤマボウシは初夏を代表する花といっていいでしょう。

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    段々になって咲くミズキの花      白さが目立つヤマボウシの花

 ヤマボウシは、花の美しさから街路樹や公園の樹木として植えられることが多くなったので、近寄って花を見ることができます。
 ヤマボウシの花はちょっと変わっています。花びらのように見える白いものは、正確には花びらではなく、花のつぼみを包んでいた葉が変形した総苞片(そうほうへん)と呼ばれるものです。花は、とても小さく、白い4枚の総苞片の真ん中に20~30個程集まってボールのようになっています。その小さな花の一つひとつをよく見ると、黄緑色の花びらが4枚、雄しべが4本、雌しべが1本、そしてガクが筒状になっているのがわかります。

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  4枚の白い総苞片、中心にあるのが花

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  飛び出しているのが小さな花の雄しべ

 ヤマボウシは、漢字で「山法師」と書きます。花の中心にある緑の球状のものが坊主頭に似ていて、白い花びらのような総苞片が頭に巻く頭巾のようなので、山にいる僧侶になぞらえ名づけられたといいます。
 中国名は「四照花」といいます。枝一杯に花が咲いたとき、あまねく四方を照らす光のように感じてそう名づけられたのでしょう。国によって、白い花への見たてや感じ方の違いがおもしろいと思います。

f:id:mkbkc:20190606085843j:plain   日本では「山法師」、中国名は「四照花」

 ヤマボウシの花の受粉が終わると、雌しべのもとの子房が膨らみ、筒状のガクが付着してサッカーボールのような果実になります。その果実は小さな花の果実が集まった「集合果」といわれるものです。直径1.5cm程の緑色の果実が、葉の中から上向きに突き出るので、遠くからでもよく見えます。

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  突き出るヤマボウシの青い果実     遠くからでもよく見える果実

 秋になると、果実は熟してオレンジ色から赤色になります。上向きだった果実が下向きにぶら下がり、十分に熟すと地面に落下します。
 果実が熟しても、表面がゴツゴツしていて、最初見たとき、とても食べられそうもありませんでした。ところが、秋田地方では、ヤマグワ(山桑)と呼んで食べていると聞いてかじってみると、これがとても甘いのです。 果肉には小さな種が入っていますが、マンゴーやバナナ、あけびの味に似て、体に優しい甘さがありました。

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  熟し始めた果実

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  たわわに実る果実

 学級担任をしていた頃に、学級懇談会で、ヤマボウシの実を食べた話をしたら、ある子のお母さんが、いろんな食べ方を教えてくれました。
ヤマボウシの実は赤みが増して落ちそうな頃が食べごろなんです。熟して落ちても傷んでない実は大丈夫。よく洗って皮を剥きそのまま食べてもいいし、洗った実を冷凍し、シャーベット状にして食べるのもおいしいです。潰したものを炭酸水に入れて、少しレモンを絞って「ヤマボウシスカッシュ」にすると、うちの子は大喜びなんです。ほかに、乾燥させてドライフルーツしておくとか、果実酒もいいし、いちばんのおすすめは「ジャム」ですね。保存しておけば、パンやお菓子やいろんな料理に楽しめますよ。」

 この話をきっかけに、他の父母からも、家族で野山に出かけ、ヨモギや山菜をつんで料理して食べたこと、桑の実やキイチゴなどでジュースやジャムを作った話などが出されて、子どもと一緒に季節のものを味わう楽しさが語られたのでした。

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   秋、紅葉を始めたヤマボウシ。下にぶら下がり、実が熟す頃、落下します。

 野菜や果物は、もともとは野生のものでした。人は自然に生えている植物の葉や根、実の中から食べられるものと、食べられないものをよりわけ、長い時間をかけて食べもの増やしてきました。食べる方法も、日に干したり、寒風にさらしたり、アク抜きをしたりするなど、さまざまな知恵と工夫をこらしています。    

 現代の消費社会では、命のもとになる食べ物を作る人と食べる人とが別々で、食べ物はすべてお金をなかだちにして手に入れる暮らしになっています。そして、それが人と自然とのつながりを見えなくさせています。

 私たちがこどもたちと一緒に、季節の山菜や木の実などを探して食べてみるということ、ただそれだけのことでも、こどもたちには、季節を感じ自然の恵みを味わういい体験になっていると思うのです。
 もし、教室でその体験を話題にしたり、生活科や家庭科の授業でとりあげるなら、食料を手にしてきた人間の知恵や工夫を考えるいい教材にできるでしょう。 

 人は自然の恵みを受けて生かされていると感じる感覚は、こどもたちが、自らの未来をどう生きていくかを考える土台になっていくような気がします。(千)