あけましておめでとうございます。
一昨年、昨年と元旦は自宅近くの台原森林公園に佐藤忠良さんの「緑の風」に会いに行っています。我が家では、恒例行事になりつつあります。よっちゃんは年に1度の定点観測みたいと笑います。
そうかもしれません。これからの1年を迎えるにあたって自分の立ち位置を確かめリセットするための・・・。近ごろは、変わらずにあることの難しさや大事さを感じることが多くなってきました。
この仕事をするようになってからずっと心に留めている言葉があります。それは、“歩みいる人に安ぎを、去りゆく人に幸せを” という言葉です。大学時代、大変お世話になった先生の研究室のドアに書かれていました。ドイツのローテンブルグという中世の城塞都市の入り口に掲げられているそうです。研究センターをこういう場にしたいと思ってきました。明日からの「冬の学習会」が仕事始めとなります。今年もみなさんと一緒に変わらず研究センターの取り組みを一つひとつ創っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
年末から冷え込みが厳しくなって雪の元日になるだろうかとも思いましたが、さいわい穏やかな朝となりました。今年元旦の「緑の風」と台原森林公園です。
( キヨ )
種子について
——「時」の海を泳ぐ稚魚のようにするりとした柿の種
人や鳥や獣たちが
柿の実を食べ、種を捨てる
——これは、おそらく「時」の計らい。
種子が、かりに
味も香りも良い果肉のようであったなら
貪欲な「現在」の舌を喜ばせ
果肉と共に食いつくされるだろう。
「時」は、それを避け
種子には好ましい味をつけなかった。
固い種子——
「現在」の評判や関心から無視され
それ故、流行に迎合する必要もなく
己を守り
「未来」への芽を
安全に内蔵している種子。
人間の歴史にも
同時代の味覚に合わない種子があって
明日をひっそり担っていることが多い。
(吉野弘『感傷旅行』より)