mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

徒歩の効能 ~ 桑原武夫『一日一言』ルソーの言葉より ~

 今、朝日新聞に連載中の「折々のことば」はおもしろい。何気ない日常のことばを掬い取って、短いことばを鷲田さんが添える。とたんに、そのことばが、読み手の前でキラキラと光り出す。ちなみに今日16日は「捨てるものが少なくてすむのは気持ちがいいです」。この、どこでも聞かれそうな何気ないひと言が添えたことばで一気に読み手の胸をさす。毎日、新聞を楽しみに待つ。

 岩波新書の1冊に「一日一言」(桑原武夫編)がある。これは、編者の桑原さんによれば、「人類史上の名家の語録を、無秩序に集めるのではなく、1年、365日の日々に、それぞれその日にゆかりのある人物の言葉を収録し、略伝と肖像を添え、読者諸君が、毎日ひとつずつ言葉を深く味わいうるようにしたいと思った」と「はしがき」に書いている。史上の偉大な人物と言っても、その日に生没が重なることがたくさんあるだろうし、その日が不確かな人もまた多かろうから、1冊にするまでの労苦はたいへんだったろうと想像する。
 今日6月16日は、この日、ドイツ兵に銃殺されたフランスの歴史家マルク・ブルック。
 ルソーも6月に入っており、「6月26日、ジュネーブで生まれた」とある。以下は取り上げられたルソーの言葉。

 ひとり徒歩で旅したときほど、ゆたかに考え、ゆたかに存在し、ゆたかに生き、あえてゆうならば、ゆたかに私自身であったことはない。徒歩は私の思想を活気づけ、生き生きさせる何ものかをもっている。じっと止まっていると、私はほとんどものが考えられない。私の精神を動かすためには、私の肉体は動いていなければならないのだ。田園を眺め、快い景色の連続、大気、旺盛な食欲、歩いてえられるすぐれた健康、田舎の科学の自由さ、私の隷属を思い起こさせる一切のものから遠ざかることが、私の魂を解放し、思想に一そうの大胆さをあたえる。

 読んだ私のなかに、田舎の自然の中を自由にあるきまわった子どもの頃の自分が浮かんできた。
 同時に、つねづね気になっていたことだが、スクールバスで通学してというたくさんの子どもたちの様子も浮かんできた。( 春 )※ 執筆は、6月16日です。