mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

季節のたより5 マタタビ

梅雨を知らせる 白い葉 

 「葉っぱが白くなってきたから、そろそろ梅雨だよ。」
 子どもの頃に田舎の祖母に梅雨を知らせる植物として教えてもらったのが、マタタビでした。沢沿いの斜面を覆うように咲いているのは白い花、と思ったらそれは花ではなく、表の片面だけが白くなった葉っぱの集まりでした。
 夏になり台風の時期が来ると、マタタビは葉の下に実をたくさん落とし、祖母はその実をひろって、体にいいからと果実酒を作るのでした。

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 5月から6月にかけて、森は新緑の美しい季節です。歩道を歩くと木々の白い花が目につきます。ウワミズザクラ、ミズキ、ガマズミ、ヤマボウシなど、どれも白い花を豪華に咲かせます。雨の日は、花の白さが緑に鮮やかに映えます。木々は白色が緑色に似合うことを知っているかのようです。遠くからでもよく見えるので、花の受粉を手助けしてくれる虫たちを呼び寄せるのには最も効果的な方法です。

 ところが、いっぷう変わっている植物がマタタビです。マタタビは落葉性のつる植物で、近くの木々にまきついて大木の陰にならない環境を選んで生長します。沢沿い、丘陵、山地の林縁などに見られるのは、そのためでしょう。花期には梅の花に似た甘い香りのする白い花を咲かせますが、どういうわけか葉のかげに隠れるように花をつけます。これでは、虫たちが遠くから花を見つけるのは困難です。

 そこで、マタタビが選んだ作戦は、緑の葉を白くすることでした。
 花期が近づくと緑の葉に混じって白い葉が目立つようになります。近づいて葉の下を見ると、かわいいつぼみを見られます。花が咲き出すのがちょうど梅雨の頃です。マタタビの葉が傘になって咲いた花の傷むのを雨から守っているようです。葉かげに花をつけるのそのためなのかもしれません。

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   葉かげに見える 小さなつぼみ     葉かげに咲く マタタビの花

 雨にぬれて鮮やかな白い葉は、遠くからは白い花のように見えます。呼び寄せられた虫たちは、花と思ったら葉だったのでがっかりするでしょうか。心配無用です。葉かげに匂う花の香気に導かれ花のありかがわかるようになっているからです。
 花が受粉を終えて、梅雨が明けるころ、白い葉はふたたび緑の葉にもどっていきます。

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  マタタビは、雨の季節を選んで花を咲かせ、葉を白くして花のように見せかけながら、森の木々とは違った生き方で、その命をつないできました。
 マタタビは最初からそのようなしくみを備えていたのでしょうか。私たちが目にする今の植物の姿は、常に進化してきた結果でしかありません。もともと緑だったマタタビの葉が突然変異で片面が白くなったものができて、その葉に虫たちが花と間違え集まってくれば、花の受粉率も高まります。そのような遺伝子をもつマタタビの仲間が、自然界で生き残ることができたと考えられます。

 マタタビには雄花だけをつける株と、両性花をつける株があります。他にも雌花だけの株や、雌花と両性花を一緒につける株もあるそうです。3種類の花をつけるということもマタタビの生存にとって何か意味のあることなのでしょう。興味がわいてきます。

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      雄しべだけの 雄花        雄しべと雌しべのある 両性花

 マタタビの実も2種類あって、虫こぶのできたカボチャ型の果実は鎮痛や強壮の薬用に、ドングリ型の普通の果実は果実酒や塩漬けとして利用されています。「ネコにマタタビ」の効用はカボチャ型の実が強いようです。

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  カボチャ型の実(虫えいと呼ばれる)  ドングリ型の実(普通に見られる実)

 マタタビキウイフルーツの仲間なのでその実は食べられますが、生ではピリピリ辛くてとても無理、しびれが後まで舌に残ります。おすすめできません。熟した実の塩漬けはお酒の好きな人には珍味です。でも、何個も食べられるものではありません。

 湯の宿に一夜ねむりし朝めざめ/またたびの実の塩漬を食ふ 

 歌人斎藤茂吉の短歌です。茂吉はきっと前の夜に飲みすぎたのでしょう。ぼうっとする頭をしゃっきとさせるには、ピリっと辛いマタタビの塩漬けが最も効果的だったのでは。(千)