mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

中学生いじめ自死、それぞれの思いや声挙げるとき

 仙台市の中学生いじめ自死にかかわって、元教師の高橋幸子さんの投稿が河北新報『持論時論』に掲載され、diaryでも紹介しました。

 その後も7月3日(月)には、中学校の現職教師である遠藤利美さんの投稿が『持論時論』に掲載されましたし、NHK仙台仙台放送などでは特集番組も組まれました。教育や子育てにかかわる多くの人が、それぞれの思いや声を挙げるときなのかもしれません。以下、遠藤さんの『持論時論』を掲載します。

    いじめ自殺対策 目行き届く体制整備を

 仙台市で、この3年間に中学生3人の尊い命が、自死で失われました。いじめが原因とみられ、市教委と学校現場は、マスコミや市民からの批判の渦中にあります。直ちに何かしらの「対策」を行う必要に迫られてのことなのでしょうが、市教委の対応は対症療法的なものにとどまっているとの印象を免れません。
 「アンケートによるいじめの早期発見、早期対応」「夏休み前半までに全ての生徒との面談」などを学校に求めています。これは短期的・限定的には効果もあるでしょう。しかし、長期的で持続可能な方針がないまま対応の強化を求め続けることは、現場をさらに疲弊させ、逆効果になりかねません。
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 子どもたちは自分を取り巻く環境の中で、多かれ少なかれストレスを抱えています。こどもたちがさまざまな活動を集団で行う学校では、人間関係のトラブルは日常茶飯事です。学校ではそうしたトラブルや悩みに対し、教職員が臨機応変に対応しています。多くの学校では休み時間にも教職員が廊下で過ごすなどの活動も日常的に行われています。誠心誠意、子どもたちに向き合っています。
 アンケートや面談を強化すれば、早期発見は期待できるでしょう。しかし、生徒が不登校や別室登校になった場合でも、教職員の数が少ないため、長期的に丁寧な対応をし続けることは難しいのが実情です。保護者が教員の忙しさをみて、相談したいのにためらうこともあるほどです。
 保護者や生徒からの相談希望が急増しているスクールカウンセラー(SC)が週1日しか学校にいない状況も問題です。SCが常駐するようになれば、子どもたちの心のケアも早い段階から可能になることは間違いありません。
 また、親子間のトラブルなどに対応するためのスクールソーシャルワーカー(SSW)の増員も喫緊の課題です。現在、仙台市に5人しか配置されていないため、各学校は相談したい事案をたくさん抱えながらも遠慮している実態があります。子どもたちへの支援体制は明らかに不十分です。
 マスコミも学校現場の異常な労働実態を取り上げています。仙台市の学校でもいつ教職員が倒れてもおかしくない状況です。条件整備抜きの取り組み強化は限界に近づきつつあります。学校に求められているのは、ゆとりとアットホームな雰囲気です。子どもたちが楽しく過ごせる学校が理想です。私たち教職員自身が人権感覚をさらに磨く努力も大事でしょう。
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 教職員が時間的にも精神的にもゆとりを持つことで、生徒と気軽に声を掛け合えるような温かい人間関係づくりを進めることが大切です。そのためにも一人一人に目が行き届く少人数学級の実現やSC、SSW増員、フリーの教職員の加配など、長期的視野に立った条件整備が早急に求められます。
 マスコミには、学校での取り組みや課題をリアルにつかみ、学校が良くなる方向で市民と教職員が協働できるように、力を貸してほしいと思います。

  いのちを守り、はぐくむ教育の場が、いのちをすり減らし奪う場になってはいけません。しかし残念ながら、今の学校は、子どもたちのみならず教職員も命をすり減らす場になっているようです。1990年前半は1,000人前後で推移していた教職員の精神疾患による休職者は、その後年々急増して今や5倍の5,000人を超えています。

 この7月発行の『センターつうしん』87号の中には、日々の授業準備もままならない学校現場の現状と厳しさが、次のように綴られています。

 授業の質は教師がその教材をどれだけわかっているかに規定されるので、ー(中略)ー 教師自身の深い学び(教材研究と実践検討)が必要となる。しかし、校内諸会議・提出文書作成、アンケート集計、学力検査分析・集金業務・生徒指導・保護者対応・研修・〇〇教育の追加(例えば環境、食育、防災、いのち、自分づくり、エネルギー等)などが、教科教育にかける時間を奪い、長時間過密労働が常態化している学校現場でそのような教師の学びを期待することは極めて難しい。

 子どもたちが朝登校し下校するまで、教師はほとんどの時間を子どもたちと過ごしています。ですから、上記のさまざまな仕事のほとんどが、子どもたちが帰った放課後にならざるを得ません。一番時間をかけたい授業準備や子どもへの対応・支援が二の次、三の次にされてしまっているのが現状です。

 新聞やテレビなどでも、様々なかたちで教師の仕事のあり様が問題になり始めています。学校は、子どもたちが学びを通じてヒトから人へと成長する場です。同様に、教員も日々子どもと向き合う中で教師へと成長していきます。

 教師や学校のおかれている現状、その中で今何が課題となっているのか。そして、どう子どもたちと向き合うことが求められているのか。そのために何ができるのか。私たち一人ひとりに問われているように思います。( キヨ )