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mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記です。

11月26日

 昨日、種子島宇宙センターからH2Aロケット29号機が打ち上げられ、成功したと報じられた。この報を聞いて私は、1984年、種子島から打ち上げられた最初の放送衛星についての4年生S君の日記を思い出した。私にとっては忘れられない日記であり、子どもとのやりとりなのである。S君の日記をそのまま紹介する。

 

◎1月23日

 きょうの4時58分に、たねが島うちゅうセンターから、ほうそうえいせいがうちあげられました。うちあげられた時、ぼくはスイミングに行ってました。前、お母さんが「どうしてこんなはんぱな時こくなのかなあ」と言いました。ぼくは、もしかしたらと思って、天文手帳を見てみました。なんで天文手帳を見たかというと、そういうはんぱな時こくは、よく、日の出・日の入りなどの時こくだからです。このことは、天文手帳を見てわかりました。そしたら、ズバリせいかいでした。1月23日の午後4時58分とは、日の入りの時こくなのです。

 でも、まだわからないことがありました。それは、なぜ、日の入りの時こくにほうそうえいせいをうちあげるのかということです。べつに日の入りじゃなくてもいいはずです。どうしてかなあと何回も何回も思いました。

 

◎2月4日

 ほんとは、きょう、ほうそうえいせいのことを調べるはずだったんだけど、M君と遊んでしまってできませんでした。

 朝、きようこそはぜったいにやろう、と思うんだけど、どうもわすれてしまいます。だめだなあ、と思いました。わすれないようにすればいいんだなあと思いました。そして、電話番号が書いてある紙を、ふではこの中に入れました。

 あした、勉強するとき気づくからです。あしたこそは、ぜったいやってやる、いや、ぜったいできる、と思いました。

 

◎2月5日

 きょう、ほうそうえいせいのことを科学館に聞きました。

そうしたら、「しょうらい、コンピューターで、えいせいを赤道にこていするのだ」そうです。この話を聞いて、ぼくは、ぼくの聞いたこととかんけいあるのかな、と思いました。まだ話はおわってませんでした。地球には重力があって、1秒に11キロのはやさでないと、だめなそうです。それで、「きしょうのよいときにうちあげたんじゃないかな」と言ってました。

 でも、これは、たぶんなので、また考えてみるそうです。「また、火曜日に電話して」と言ってました。

 ぼくも、よくわかりませんでした。

 

◎2月7日

 きょうは、火曜日です。さっそく、科学館に電話をしました。

そしたら「よくわかんないから・天文台の竹沢という先生に聞いてみて」と言いました。ぼくは、科学館ではわかんないのかなあ、と思いました。

 天文台に電話をしてみました。そしたら、このことは、天文台でもぎもんなんだそうです。それで「NHKの、『600こちらじょうほう部』の金曜日に、相談を聞いてくれるのがあるから、それに聞いてみて」と言われました。

 天文台でもだめか、と思いました。いつわかるんだろうと思いました。

 

★以上がS君の日記。これを学級だよりに載せ、私は次のようなことを書き添えた。 

※ 放送衛星についてのS君の4回の日記です。お母さんがちょっとつぶやいたことがきっかけになったわけです。子どもを育てるときの大人の役わりは何かをたいへん見事に語ってくれます。もちろんこのことは私も知りません。それでいて「どうしてかなあと思うだけで終わりにするの?」といじわるをし、S君に調べて教えてくれと頼みました。その方法は、以前K子さんが調べた方法がいいだろうから、K子さんに電話番号を聞いてやってみるように言いました。

 その理由はそれほど深いものでないかもしれません。しかしそれをどこまでも追いかけることはS君に無形の大きいプラスをあたえるだろうと考え、ときどきせついたのです。しかし、科学館がダメ天文台もダメでNHKに回されたということには私はたいへん残念です。S君はあきらめていませんが、NHKはすべてに答えるわけではありませんからそのままになってしまう可能性が大です。「ぼくの聞いているのと関係あるのかなあ」と困ってしまったり、「天文台でも疑問」と言われたり、ずいぶん大人の世界も見たことになるのでしよう。

 私も聞かれた人々を批判するだけではいけません。S君の少しは役に立とうと、字宙センターに手紙をだしました。

 

★以上が学級だよりだが、後日、宇宙センターから、資料を添えたていねいな手紙をいただいた。もちろん、すぐ子どもたちにその手紙を見せた。その時のS君の顔は今でも私の中に残っており、私の教師生活の宝の一つになっている。( 春 )