いまバスの中で広げている本は、むのたけじさんの『99歳一日一言』だ。
むのさんの講演は、教師生活数年目に初めて聞いて、その後、何回か聞く機会があった。
話を聞いているうちに、自分が叱られているような気分になり、しぜんにうつむいている自分を発見する。それでも、次に機会があると懲りずにまた聞きに行き、同じ自分の姿になって帰る。
1度は、「南ヴェトナム戦争従軍記」で知った岡村昭彦さんと2人の競演を聞いたことがある。仙台のど真ん中、東二番丁小学校の上にあった市民センター会場だった。2人は競うようにしゃべっていた。今から考えると、お2人だけでなく、みな今よりもっともっと元気だったように思う。
組合支部書記Aさんの薦めで、むのさんの個人新聞「たいまつ」の読者にもなった。
そのむのさんの新書だが、むの調は99歳でも変わらない。その元気には脱帽だ。
その1つを紹介する。
6月6日
人生は重荷を負うて山道を行くが如し、なんていう一句は受け入れるな。万人の誰の人生でも、荷を負わされて登るときもあれば、自分から負って降りるときもあれば、負いたくても荷のないときもある。人生って何だ。もっとふっくらゆっくりと自分の人生を受けとめなさい。人生は自分を自分でゆっくりふっくらと味わうものだ。
一日一言、6月6日の言だ。でも、どうだろう、かつて私の聞いた講演で、「ゆっくりふっくらと味わう」なんて、1度も耳にした記憶がない。もしあったとすれば、私はうつむかずに済んだと思うから。それにしても、99歳で「ゆっくりふっくらと人生を味わえ」なんて言うのは気持ちがいいものだろうなあ。