mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

1月24日

 公開授業のことをつづける。

実験の様子を見つめている仲本さんに、「実験道具もすべて作ってくださったんですね、たいへんだったでしょう」と声をかけると、「針金を真っ直ぐにするのがちょっと面倒でした」との返事。41組となるから最低10組分は作っていただいたわけだ。ビニールゴムカバーの針金と小さいクリップ、それに縫い糸とをS学園の学園長室にもちこんで、おひとりで、切り、伸ばし、メモリをとり、支点に糸を結わえ・・と教具つくりをなさっている仲本さんの姿が浮かんできた。

 仲本さんにはたくさんの財産があるはずなのに、あえてそれらを使わなかった。

 そのためのご苦労は大変なものだったに違いない。そのご苦労のほどは、いただいたメールの文のそちこちでも感じることができる。その一部を紹介する。

12月29日

ようやく休みに入りましたので、現在、頭を完全に切り替えて教材づくりに集中しつつあります。ただ、これまでやったことのない切り口で、やりたいと思っておりますので、うまくいくかどうかまったく未知数です。

1月12日

本日、教材 B4版 7枚をお送りいたします。教材づくりは山場はこえておりますが、実験用教材やまとめ等あと4枚ぐらいですが、最悪当日になるかもしれません。積分の授業の最後が1999年度ですので、だいぶ勘がにぶっていると思いますが、今回のためにすべて再構成しようと準備しました。進捗状況は、またご連絡いたします。

1月16日

教材づくりに時間がかかっておりまして、当日印刷ということも多分にあると思いますので、よろしくお願いいたします。

1月17日

一応実験準備も終わり、なんとか出発できそうですが、しばらくやっていないのでどうなることやらと思います。別件ですが、授業の流れをもう一度振り返ってみたいと思いまして、できましたら定点でいいのですが、録画していただけるかご検討いただけると幸いです。はさみと電卓は各10台持参いたします。

 授業を創るということは、なんと厳しく辛い仕事か。仲本さんは、絶えず、当日うまくすすまないのではないかという心配をかかえながら、創造への挑戦を止めない。

 当日も、公開授業だからといって、授業中、演技のかけらも見せない。たった2時間であり、ご自分でも時間不足の心配は大いにあったろうに、生徒の答えを少しも急かせない。実験で初めて緊張がほどけたのではなく、初対面の教師のこのような向かい合いによって生徒の心はしだいにゆるんできていたのではなかったか。

あくまでも、授業目的である「わかるとはどういうことか」「デカルトの方法を使って積分法に挑戦」にまっすぐにすすんでいく仲本さんの姿を私はうらやましく眺めていた。仲本さんから、3年間数学を学んだ中里百合子が、「これからも、一人でも多くの人を、数学大嫌いの地獄から救ってあげてください。絶対ですよ」と言って卒業していったと、著書「新学力への挑戦」に書いてある。今回、短時間とは言え、仲本さんの実際の授業づくり・授業を目にすることで、中里にこのようなメッセージを書き残させたものは何だったのか、そのナゾが解けたような気がした。