子どもをとりまく環境の悪さを声高に騒ぎ、どうならなければならないか幸せの道を説くだけではほとんど何も変わらない。学者・研究者はそれでもいいのかもしれないが、教師はそれではいけない。他のせいにするだけでは子どもと一緒に教室にいる意味はないのだから。
8日のサークルにMさんの「羊毛からの帽子づくり」の報告があった。そのレポートの書き出しはこうだ。
羊毛という自然素材を使い、手でこする作業で出来上がる帽子。自分なりの物ができた時の喜びを味わい、さらに身につけた時にうれしさが広がる。
小学校3年生の子どもたちに、羊毛という柔らかい素材はどのように受け入れられるのか。
家ではゲーム遊びで、プラスチック製品を手にすることが多い。そんな子どもたちの物に対してのやさしさはどれくらい見られるだろうか。
水とお湯で、友だちとお話をしながら、わいわい楽しく作れるフェルトの帽子。
学芸会でかぶるという目的を設定することで、完成に向けて意欲を高めさせ、制作にとりかかった。
と。
3年生106人が、30色のなかから好きな羊毛を選んで帽子つくりは始まった。
仕上がった時、子どものひとりは次のように書いた。
さいしょは、こんなんでぼうしができるのかなと思っていたけど、おゆ、水のじゅんで、手まをかければかけるほど、毛がからまっていった。ぼうしができたときは、すごくうれしいなと思いました。
学芸会では「世界にひとつのぼうし」をかぶって演技をした。並んだ写真を見ただけで子ども
たちの誇らかな気持ちが伝わってきた。親たちからの感想もよかった。
Mさんは、このレポートを次のように結んでいる。
子どもたちは、実際羊を目にすることはない。「飼っている羊の毛を刈り取り、糸に紡いだり、染めたりして、それで家族のセーターを編む」という暮らしがあったことを伝えたい。
また、毛糸つくりに興味をもった子もいるので、スピンドルで紡いでみせたい。
羊毛から、私たち人間の生活と羊との関わり、繊維、工業などへの学習を発展させることもできると思われる。
私は報告を聞きながら、教室がある、学年がある、互いの学びとつながりまで羊毛を通して感じた。