mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

7月9日

 人前では偉そうなことを言いながら、いつまでたっても一人前の「センセイ」になれない自分にイライラしながら38年間の教員生活が終わって15年になる。悔しい思いの片方で、子どもや仲間にいたらない自分をさらさなくてよくなったことにホッとという気も同居するという情けない卒業の日のことを今も忘れない。

 そんな自分が、先月のサークルの例会に久しぶりに顔を見せた2年目のAさんに、「Aさん、この間読んだ本で、赴任の時、校長に『先生も10年しないと一人前とは言えないよ』と言われたと書いてあったよ、あんたなんか、まだまだ一人前ではないんだから・・」と言った。

 Aさんを気楽にさせたいと思ってのことばだったのだが、後で、あれはAさんのためによかったのだろうかと気になった。

 「この間読んだ本」とは、「『銀の匙』の授業」で話題になった、元灘校の橋本武さんの書いたものだ。橋本さんは、校長にそう言われて、「まだ半人前の人間が教壇に立つのだから、なんとかがんばってやらなきゃいけないと思って一生懸命にやった」と言っている。

ところが自分はそうではない。そんなに容易に一人前になれないのだからと自分を許しながら年を重ねているうちにそのまま卒業になってしまったのだ。Aさんに言った言葉の裏にそんな気持ちの自分が潜んでいたことに気がついたのだ。

 校長にそう言われた後の橋本さんの努力は並みでなかったことは本を読んでよくわかる。

 若い時に読んだ「可能性に生きる」のなかで斎藤喜博さんが「身体が弱かったので1年しか生きられないと思い、11年が勝負だった」と書いていて、ドッキリしたことがあったのだが、それもいつの間にか自分から遠のいていき、またまた怠惰な自分になっていた。そんな甘い自分をわずかに支えてくれたのがサークルだったと思う。サークルにだけは真面目に参加した。もし、このサークルにも行っていなかったら、恥ずかしくて人目を避けてくらさなければなかったかもしれない。

 このように自分を振り返ってみると、やはり、Aさんに言った言葉はまちがっていたようだ。「一人前の教師になるには10年かかるそうだ。だからこそ、せめて月1回のサークルには、忙しくてもやりくりして参加した方がいいよ」と言うべきだったのだ。