mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

西からの風

西からの風16(葦のそよぎ・一つの悲歌)

隠れん坊における「隠れる」という演技は、社会からはずれて密封されたところに「籠る」経験の小さな軽い形態なのであって、「幽閉」とも「眠り」とも、そして社会的形姿における「死」とも比喩的につながるものであった。要するにそれもまた、社会から一時…

西からの風15(葦のそよぎ・物語の消滅)

虚構の物語の方では、実際に作者は糸を操り、遊びを指導しているのである。虚構の物語は作者を明らかにする。それはちょうど、すべての芸術作品がだれかによってつくられたことをはっきりと示すのと同じである。このことは真実の物語の性格についてはいえず…

西からの風14 ~私の遊歩手帖6~

沖縄を歩く 2 前回「沖縄を歩く1」で、僕は高橋和己の『堕落』について言及した。 遊歩は奇しき連想と出会いとの往還を歩む歩行である。またしても。沖縄でも。 『堕落』の主人公青木は、満州から命拾いするように(一時シベリヤ抑留も経験)日本に引き揚げ…

西からの風13 ~私の遊歩手帖5~

沖縄を歩く 1 6月23日、沖縄は「慰霊の日」を迎える。この日、日本国内で日米両軍が相まみえた唯一の地上戦であった沖縄戦、その3ヵ月を超える組織的戦闘が遂に終結した。僕はこの日糸満市のかの摩文仁の丘にある県立平和祈念公園で開催された慰霊式への…

西からの風12(葦のそよぎ・心のある道)

葦のそよぎー心のある道ー ——わしにとっては、心のある道を歩くことだけだ。どんな道にせよ、心のある道をな。そういう道をわしは旅する。その道のりのすべてを歩みつくすことだけが、ただひとつの価値のある証しなのだよ。その道を息もつかずに、目を見ひら…

西からの風11 ~教室から6~

黒澤作品『生きる』と学生たち 私はこの「教室にて」のコーナーに、昨年度の大学での自分の授業体験をとおして感じ考えたことを書き綴ってきた。その締めくくりにぜひ取り上げようと思った事が一つあった。ところが、忙しさにかまけてできないでいた。それを…

西からの風10(葦のそよぎ・裸形と境界)

葦のそよぎ ー裸形と境界ー ここではあらゆる習慣的カテゴリーが混乱しているが、それゆえにこの境界状況とは、既成の一切の構造的確言にたいするラディカルな否定であると同時にまたあらたな観念やあらたな社会関係が誕生してくる元になる純粋可能性の領域…

西からの風9 ~私の遊歩手帖4~

◆ルーベンスと磔刑像 かつて私はニーチェを論じた拙著『大地と十字架』のなかに探偵Lという我が分身を登場させ、彼にこう言わせたことがある。 「実に奇妙なことだな。この惨たらしい死骸の像を信仰の核心としているなんてことは」。あるとき、ふと俺のなか…

西からの風8 ~私の遊歩手帖3~

◆「夏」— ボナール もう既に10年以上前になる。 僕は『いのちを生きる いのちと遊ぶ——the philosophy of life』(はるか書房,2007)という本を出したとき、そこに次のように書き入れていた。「僕はドイツ表現主義から2つのメッセージをもらった」と。つけく…

西からの風7 ~教室にて5~

◆ 幾つかの導きとなる言葉 《自分のなかのトラウマを問うということは、それ自体、人間にとって生を励まし豊饒化させる働きをする肯定的経験と、それを破壊する否定的経験、そのどちらがその人間の世界観を定める基礎経験の地位を占取するかの主導権争い、こ…

西からの風6 ~教室にて4~

◆トラウマとの対決という新たなる人生のステージ 児童期における「無視」という暴力経験の雛型性はどの点にあるのか? 既に触れた問題ではあるが、念を押したくなる。 キーワードは「グループ」であり、そして、イジメが「信頼関係の突如たる取り消し」とし…

西からの風5 ~教室にて3~

◆トラウマ大陸への視座 前回・「教室にて2」に私はこう書いた。その後の精査に基づき一部数値を訂正(太字)してくりかえそう。 学生たちのレポート「私のイジメ経験」(イジメられたにせよ、イジメたにせよ、傍観者となったにせよ、自分自身が経験ないしご…

西からの風4 ~教室にて2~

◆もうひとつのイジメの場、部活 バンド「神聖かまってちゃん」のリード・ヴォーカルである の子(のこ) は歌う。歌「友達なんかいらない死ね」で。 ショットガンであいつの頭ぶちぬいてやる/ シチューで食べたいやつがいる/ お友達ごっこしなくちゃいけないな…

西からの風3 ~私の遊歩手帖2~

◆ 「叫び」― ムンク 僕にとって「遊歩」とはつねに共振すべき何ものかとの出会いを求めての歩行である。—— そう書いた。この「私の遊歩手帖」の第一回目の終わりに。ルオーの作品「ミセレーレとゲール(憐れみと戦争)」との出会いを糸口にして。その出会い…

西からの風 2 ~教室にて1~

◆「見下せる相手探し」の欲望の発見者——ニーチェ 私がいま非常勤講師を務めている或る大学の講義をとおして発見したことや考えたこと、その点描を重ねてみたい。その重なり、連続線がいったいどんな風景を浮かび上がらすか、あらためてそれを観たくなったの…

西からの風 1 ~私の遊歩手帖1~

前のdiaryで、道(ミチ)さんが高橋哲哉さんとの出会いも含め、今週末に行われる講演会を紹介していますが、冒頭の案内チラシに描かれた印象的な絵は、当研究センターとも縁のある清眞人さんのものだ。 チラシ掲載の承諾をもらうため清さんに連絡を取ったお…