mkbkc’s diary

みやぎ教育文化研究センターの日記・ブログです。

お待たせしました。中村桂子さんのブックレット完成。

 昨年1月に行った中村桂子さん講演会には、100名を超えるみなさんにおいでいただきました。ぜひ書籍化をという要望もあり、中村さんにもご協力をいただいて、このたび講演をもとにしたブックレットを発行する運びとなりました。

 震災から6年を迎えようとしています。震災当初は、自然と人間のありよう、あるいは科学のありようが様々に議論されたように思います。そして、それは私たちの生活の仕方、生き方を問うものでもあったはずです。でも、それで私たちの生活や社会は変わったでしょうか。残念ながら、それ以前と何ら変わらない風景が私たちの前には依然として広がっているような気がします。自然と人間、そして科学のありようを考える一冊として、改めて今、お読みいただければと思います。

 お読みになりたい方は、以下の 注文フォーム をご利用ください。

            中村桂子さんブックレット 注文フォーム

       f:id:mkbkc:20170214115714j:plain

今年も「震災のつどい」を開催します

 3月11日が近づいてきました。今年も「震災のつどい」を行います。

 昨年は、震災後の子どもたちの暮らしや思いに耳を傾け取り組まれた中学校の実践を中心に、震災を通じて見えてきた教育の課題について考え合う機会を持ちました。

 今回は、多くの子どもたちと教師を亡くし、その責任が問われた大川小訴訟の仙台地裁判決を踏まえ、改めて教育や学校は何を大切にしていかなければならないのかを考え合いたいと思います。 

  震災から6年
 いのち・子どもと学校を考えるつどい
               ~ 大川小問題と学校防災の現状 ~ 

 日 時: 2017年2月25日(土) 13:30~16:30

 会 場: フォレスト仙台2F 第2フォレストホール

 参加費: 無料

【第1部】(13:40~15:00)

  講演「大川小訴訟が問いかけるもの」
     山形孝夫さん(宗教人類学者、宮城学院女子大元学長)

【第2部】(15:10~16:25)

  学校防災の現状について
  (1)学校現場からの報告
  (2)震災アンケートから見えること

      f:id:mkbkc:20170220104820j:plain

 

アーサー・ビナードさんが、仙台にやってくる

 アーサー・ビナードさんには、2009年に最初の講演会「日本語の海にもぐった私」をお願いして以来、大好きな詩人・菅原克己さんを語った「『ブラザー軒』のある街で、詩人・菅原克己を語る」、さらに震災後には高校生公開授業で「言の葉食堂へようこそ」と題し授業を行っていただくなど、たいへん懇意にしていただいてきました。

 今でも覚えているのは、最初の講演の終わりでのこと。突然、演題について《今日のタイトルなんだけど、僕だったらこういうタイトルはつけないよね。「私」という体言止めじゃなくて、例えばもぐってみたら~とか、もぐってみれば~とか、そういうタイトルがいいと思うんだけど・・・》と、最後の最後でさらりとダメ出しをしたのでした。こまって頭を抱えたのは、タイトルを付けた当時の所長の(春)さん。頭を掻きながら、なぜこのようなタイトルにしたのかをまじめに、かつ一生懸命に説明を始めて・・・。その二人のやり取りの可笑しさに、会場はあたたかな笑いに包まれ、その後の質疑応答が、大変なごやかで楽しいものになったことを記憶しています。

 そのアーサーが、2月19日に仙台にやってきます。震災後の政治や社会のさまざまな出来事を、彼一流の言葉のセンスと視点からユーモアを交えながら縦横無尽に語ってくれると思います。ぜひご参加ください。(キヨ)

 

      f:id:mkbkc:20170216111046j:plain

2月14日 金子兜太さんと父と、トラック諸島

 私は、今になっても「トラック諸島」という文字を目にするとドキッとする。
 12日の朝日新聞の3面「武器という魔性への一閃」のなかに「トラック諸島」を見つけた。それは、こうだ。 

 人を殺める兵器や武器はおよそ俳句の趣向に合いそうもない。しかしそれらを詠んだ名句もあって、金子兜太さんの破調の一句はよく知られている。

 〈魚雷の丸胴蜥蜴這い廻りて去りぬ〉

 金子さんは先の戦争中、海軍主計中尉として南太平洋のトラック諸島に派遣された。米軍の執拗な爆撃に叩かれ、修羅場となった島のヤシ林の奥に、攻撃機に抱かせる魚雷が隠して積んであった。
 あるとき、その丸みのある鉄の肌の上を、トカゲがちょろちょろ走って消えるのを見た。戦場でありながら冷たいものが背筋を上ってきたそうだ。~~ 

 この金子さんの句の作られた「トラック諸島」に私の父親もいた。未だに「トラック諸島」の名にふれると心が騒ぐのはそのためだ。

 アメリカ側の記録ではトラックを太平洋戦争の要地として位置づけ、初めから攻撃対象の地としていたようだ。他の島々と同様死者が続出しているが飢餓死が多かったように言われる。ある本では死人が出ると口数が減るので内心喜んだとの証言もあった。

 このようななかで父は、1946年2月、奇跡的に戦後帰ってくることができた。アメーバー赤痢に罹患していたことが逆に幸いして死なずに帰国できたのではないかと思っている。しかし、結局、復職までできたのだが短期間で再発して他界した。
 「自分は今トラックにいる」と書いてきたことは一度もなかったが、帰ってからも、死ぬまでトラックのことはやはり一度も話すことはなかった。

 トラック島に行ってみたいと長い間思い続けていたが、もうその機会を作ることは無理と今は諦めている。

 安保法制反対運動で私も持ったことのある「アベ政治を許さない」の、あの筆字が金子さんの書かれた文字ということは知っていたが、金子さんも父と同じトラックにいたことを知って、金子さんの句は私にとって特別意味あるものになった。

( 春 )

えっ! 何て言ったの? 高校生公開授業

 先月28日の高校生公開授業が終わって一息ついたところですが、実は授業の最後で思わぬハプニングが・・・。参観していた方なら「あぁ、あれのことかな?」と。

 当初、参観は高校生たちのまわりからしていただく予定でいましたが、高校生とリラックスしたなかで授業をしたいとの樋口さんからの意向もあり、当日は別室での映像による参観となりました。ただ、その場合に難点が・・・。授業のやり取りの音声は、すべてマイクを通してでないと聞こえないということです。そのため急遽、高校生たちにも卓上マイクを用意するなど大慌て、まるで国際会議のような授業風景となりました。

 これらの課題をクリアして、当日の授業は順調に進んでいましたが・・・。最後の最後で、高校生の発言がマイクの充電が切れてしまって聞こえず・・・、でも高校生はそのまま発言。その発言を聞いた樋口さんは「まったく100%その通りです。どうでしょう?一番いい締めになったんじゃないですか」と応えて、授業を終えたのでした。

 別室の参観会場には、樋口さんの声だけがスピーカーを通して響いたのでした。《まったく100%その通りって、何が100%で、どういう通りなの?》《一番いい締めになったって、どういう締めだったの???》と、参観者の皆さんは思われたことでしょう。テレビドラマの最終回、一番のクライマックスの場面でバチンとスイッチを切られたようなものですから。参観者のみなさんからは多くのご批判を受けるだろうと覚悟したのですが、何人かの方から「高校生は何と言っていたの?」と聞かれたものの、特に厳しいご批判や苦情を受けることなく、みなさん家路につかれたのでした。

 でも主催者としては、やはりずっと申し訳なかったなあという思いと、聞こえなかった高校生の発言をどうにか皆さんにお伝えできないかという思いが残ったのでした。そこで、このdiaryでその発言部分の記録を起こして掲載することにしました。これで十分ということにはなりませんが、お許しください。 

(高校生)

 僕は具体的なことはよくわからないですけど、例えば民主主義であったり権力であったり、暴走するのを防止してみんなでいい方向に持っていこうとするものが、いろんな歴史の中で作られてきた憲法だと考えて、それで、例えば無味乾燥な人名と特徴だったりを結びつけるような勉強も、今の憲法が持っている権力とか民主主義とか暴走する仕組みを防ぐための、それこそセイフティーネットだという感覚を持って勉強に取り組んでいけばいいのかなと思いました。そういうことでいいんでしょうか。

(樋口さん)

 まったく100%その通りです。どうでしょう、一番いい締めになったんじゃないですか。

 これからも微力ながら高校生たちに出会いの場をつくって行きたいと思います。みなさん、どうぞよろしくお願いたします。( キヨ )

またしてもアメリカの話題から『国境』を考える (追記)

 「メキシコとの国境に壁をつくる」というトランプ大統領の言葉を聞き、ある絵本を思い出し、ページを繰った。それはケストナーの『動物会議』である。ご存じとは思うが、簡単に話のあらすじを振り返る。

 

人間がけんかばかりしているので、動物たちが会議を開き、人間にけんかをやめろと何度も要求するが効き目がない。そこで動物たちは世界中の子どもを誘拐し、一夜にして子どもが姿を消す。慌てたおとなは一生懸命探したが見つからない。仕方なくおとなたちは、動物たちの要求を受け入れる。動物からは3つの条件が提示される。その条件の1番目は「国境をなくす」である。

 

 トランプ大統領に「読み聞かせ」をしたいほどだ。もちろん現実には国境がなくなるのは、まだまだ、まだまだ、ずっとずっと先のことだろう。でも、これを夢物語にはしたくない。

 ちなみに残り2つの条件は何か。2番目は「制服をなくす」ということ。3番目は「子どもを育てるという仕事は、いちばん貴重な仕事なのだから、学校の先生に一番高い給料を払う」である。2番目は単に「制服」ではないだろう。さまざまな「決まり」と捉えていいのだろうと思う。「自由」への願いともいえる。


 「国境に壁」の話からの連想ゲームに終わらせたくはない。ケストナーの願いを、みんなでバトンを渡し、たすきを繋ぎながら、『国境をなくす』という大きな夢(山)に向かって歩んでいきたい。話が大きくなりすぎたかな。せめて『国同士の争いをなくす』ことは、できるだろう。目標が大きければ大きいほど、参加する方法はたくさん考えられる。登山とおなじである。大きな山には登山口ははたくさんあるから、自分の登るコースでめざせばいい。できるところから一歩一歩の取り組みになる。<仁>

2月12日訂正追記

動物会議を再度ていねいに読み直した。前述の動物たちと人間の代表が取り交わした条件が正確でなかった。改めて取り交わした条件を整理して加筆します。

1 すべての国境をなくす。

2 軍隊と大砲や戦車をなくし、戦争はもうしない。

3 警察のつとめは、学問が平和のために役立っているかどうかをみることである。

4 政府の役人と書類の数はできるだけ少なくする。

5 子どもをいい人間に育てることは一番大事な、難しい仕事であるから、教育者が一番高い給料をとるようにする。

2月3日

 テレビは、毎日「トランプ」「トランプ」で、頭がおかしくなる。

    選挙中は、(選挙なんだから、こんな考えやもの言いの人間が出てきても仕方ないか・・・)と思って眺めていた。もちろん内心は、(まさか、こんな人が選ばれることはあるまいから)という思いがあったのだ。

 でも、なんと、この人がアメリカ合衆国の大統領になった。しかも、全米の国民投票でだ。びっくりしたが、世の中の動きをよく見て今考えると、その予兆はイギリスの選挙などにみられていたといっていいのだ。

 この頃、長い時間をかけ、血まで流して確立した「民主主義」は、(このままでいいのだろうか・・・)などと、自分自身でも驚くようなことが心にひっかかるようになっていた。

    トランプは「アメリカファーストだ。選挙で公約した国内の雇用拡大だ。・・」として、移民難民はシャットアウトだとまで大統領令として出した。

 アメリカのそれぞれのルーツをたどったら、トランプをも含めて、彼の言う移民難民と大差ないのではないか。そこにこそアメリカ合衆国が他に誇れる寛容と自由の国であるのではないか。それなのに・・・。

 ぐちってもどうにもならない他国のことだが、「アメリカ合衆国憲法」(1788年成立)を書棚からとりだして眺めてみて、(これでは仕方ないのか、ずいぶん遅れているんだ)と、振り上げた拳をおろしてしまった。ちなみに、前文はこうだ。 

われら合衆国人民は、より安全な連合を形成し、正義を確立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般的福祉を増進し、そしてわれらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここにこの憲法アメリカ合衆国のために制定し、これを確立する。 

 このような前文を掲げていながら、アメリカという寛容で自由な国と言われる国を維持してきたのは、入るを拒まず、まさに多くの移民でつくりあげてきたことによるのではないか。でも、過去を忘れてアメリカファーストなどと言っていたら、たちまち崖から転げ落ちるのではないだろうか。

   「戰争まで」(加藤陽子著)の中に、日本国憲法にふれて、「戦争放棄という主旨は、確かにGHQ 草案に起源を持っていたけれども、平和主義の発想は、日本側の発案によって憲法の条項として入れられた」という文があった。私は、(よかったなあ。いつまでもいつまでも守りつづけたい)と思った。このような憲法をもっていながら、トランプ発言に首相のことばが発せられないのは寂しいが・・・。( 春 )